昔、周防の国に蕎麦好きの旦那とごん助という下男がおりました。旦那は蕎麦が大好きで大好きで朝昼晩と三食全て蕎麦でも構わない。腹さえ膨れなければもっともっと沢山食べたいと思っておるほどでした。
ある時、旦那とごん助は岩国へ向かう旅にでました。途中、先に峠を行った4人の旅人が大蛇に食べられるのを目撃しました。大蛇は、ある茸(きのこ)を食べて、みるみるうちに大きく膨らんだお腹をぺちゃんこにして、去って行きました。
大蛇の行動を見ていた旦那とごん助は「あの茸を食べれば、ぐんぐん消化してこれまで以上に沢山の蕎麦が食べれるようになるぞ」と思いたちました。二人は、蛇が食べた茸をかき集めてご機嫌で岩国を目指しました。
そうして着いた岩国で蕎麦屋へ直行した二人は、蕎麦屋の二階へ通してもらい30人前にもなろう蕎麦を注文しました。そして沢山食べて一息ついたところで、例の茸を取り出して食べました。「これでもっと沢山食べれるな。おや、なんだかふわふわしたきたな」
夜になって蕎麦屋の娘は、二階へ通した客があまりに静かなので不思議に思って二階に上がり、悲鳴をあげました。そこに、旦那とごん助の姿はなく、着物をきた二つの大きな蕎麦団子があるだけでした。
大蛇が食べた茸は、蕎麦を消化するものではなく人間を溶かす茸だったので、それを食べた旦那とごん助は溶けてしまったのでした。いくら食い意地がはっていても、おかしな事はせんほうが良いという事じゃ。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-6-25 23:40)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第一集(日本の民話29),松岡利夫,未来社,1960年09月14日,原題「とけてしもうて蕎麦団子」,採録地「玖珂郡」,話者「岡本源七、後藤柳助」 |
場所について | 周防国(すおうのくに) |
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