埼玉県秩父に働き者の百姓一家が暮らしていました。春三月にもなると小さい畑ながらもたくさんのじゃがいもがすくすく育ちました。
ある晩のこと、家の前にずしんずしんという地響きとともに山のように大きな赤鬼が現れて、ここらへんは俺の土地に決めたと言い出しました。百姓のおっとうは震えながらも、畑を取られては家族は飢え死にしてしまうと訴えると、赤鬼は確かに死なれては後々都合が悪いから、じゃあ畑の作物を半分よこせと言います。
おっとうは思案して地面から上半分をやると約束したので、鬼はじゃがいもの葉を全部むしって食べましたが不味いだけでした。地面の下においしい実があるのを見つけましたが、約束を破れない赤鬼は悔しがって、次も来ると言い残して帰っていきました。
おっとうはまた思案すると家族で野良仕事を続け、畑に作物がたわわに実った頃にやっぱり赤鬼がやって来ました。赤鬼は今度は俺が下半分の約束だと言って畑を全部ごっそり持ち上げると土の中の根っこをむしゃむしゃと食べました。
しかし植わっていたのはアワだったのでまたもやひどく不味い思いをしたものですから、もう人間の知恵にしてやられるのはかなわんと言って山に帰ると二度と来ることはありませんでした。
(投稿者: ひかる 投稿日時 2012-1-29 10:09 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 埼玉県 |
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