昔、飛騨の山奥に、子供のいないキコリの夫婦が住んでいました。ある時、山の神様に子供が恵まれるようにお願いすると、ちょうど一年後に双子の女の赤ん坊が産まれました。
しかし、産後の日立ちが悪く、母親はしばらくすると死んでしまいました。赤ん坊に飲ませる乳が無く困った父親がふと、森の藪の中で子犬に乳を与えている山犬を見つけました。
父親が「娘達が大きくなったら嫁にやるから乳を分けてくれ」と山犬にお願いすると、双子の娘達にも乳を吸わせてくれました。山犬の乳を飲んだ娘達は、病気もしないですくすくと育ち、二匹の子犬たちと仲良く暮らしました。
しかし犬の寿命は短く、娘達が年頃に育った頃には年をとって死んでしまいました。やがて、婦たちの娘達は美しく育ち、良縁に恵まれそれぞれ嫁に行きました。しかし嫁ぎ先では、山犬の幻影が見え隠れするという理由で、すぐに暇を出されてしまいました。
二人とも実家に帰って、そこで初めて父親から山犬との約束の話を聞きました。娘達は「約束をやぶってはいけない」と、山犬の子犬たちの墓の前で、仮祝言をあげました。
(紅子 2011-12-8 2:46)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 江馬三枝子(未来社刊)より |
出典詳細 | 飛騨の民話(日本の民話15),江馬三枝子,未来社,1958年12月20日,原題「犬娘」,採集者「代情通蔵」 |
場所について | 乗鞍岳が見える飛騨の山奥(地図は適当) |
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