昔、ある山の中に、美しい娘が猟師の父親と暮らしていました。この親子の家の近くにはきれいな池がありましたが、鬼がいるという噂があったので村人たちはあまり近づきませんでした。
ある時、娘は機織りがしたくて、父から機織り機を作ってもらいました。しかし、滑りが良く使いやすい杼(ひ、横糸を通す道具)が無いため、なかなか機織りが出来ずにいました。ある朝、池の底に杼を作るのに適した、牛の角ような形の木を見つけました。この木で作った杼はとてもすべりが良く、不思議な音を奏でるので村中で評判になりました。
ある日、娘が一人で機織りに夢中になっていると、一人の若者がやってきて、娘の杼を取り上げました。この男は池に住む鬼(牛鬼)で、杼になっている自分の折れた角を取り返しにやって来たのです。
男の正体を見破った父親が鉄砲を撃つと、男は鬼の姿になり、怪我した足を引きずりながら池に逃げ帰って行きました。
しばらくすると物寂しい夜などに、池の中から機織りの音が聞こえるようになりました。今までは怖がって近づかなかった村人たちも、池に集まり楽しく踊るようになりました。
(紅子 2011-12-16 15:36)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 及川儀右衛門(未来社刊)より |
出典詳細 | みちのくの百姓たち(日本の民話 別4巻),及川儀右衛門,未来社,1958年05月31日,原題「ヒヤ潟と秋田の嫁」 |
場所について | 国見峠近くのヒヤ潟 |
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