昔、信州にドウモという医者がいて、甲州にはコウモという医者がいました。どちらも外科を専門とする名医で、特に自分が作る傷薬には絶対の自信を持っていました。そこで、お互い手紙のやり取りをして、腕比べをすることになりました。
この話は周辺にも広まり、大勢の見物人があつまりました。皆が見守る中、二人はこれまでの治療実績を披露していましたが、なかなか勝敗がつきません。そこで、自分たちの作った傷薬の効果を、実際に試すことにしました。
ドウモとコウモはお互いの刀を抜き、互いの胴体をすっぱり二つに切り離しました。見物人たちは、二人に言われた通りに傷薬を付けて、切れた体を貼りあわせました。なにせ見物人たちは素人なので、四苦八苦しながら体をくっつけました。
しかし、ドウモが水を飲めば傷口から水が漏れたり、コウモがくしゃみをすれば接合部分がズレたりしました。二人は、傷を縫い合わせしてなかった事を思い出し、慌てて傷口を糸で縫いました。無事に縫合を済ませると、今日のところは引き分けとし、二人とも高笑いしながら帰って行きました。
その後、地元に戻った二人は医者としてますます活躍し、もちろん傷口も化膿することも無く、死ぬまでどうもこうもなかったそうです。
(紅子 2012-5-14 23:26)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 土橋里木「続甲斐昔話集」より |
出典詳細 | 続 甲斐昔話集(諸国叢書),土橋里木,郷土研究社,1936年10月20日,原題「ドーモーコーモー」,話者「橘田儀三郎」 |
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