大分県、姫島の浮田の浜の漁師たちが朝、漁に出ようとすると、包みをもったお坊さんが向かいにある平郡島までの乗船を頼んできました。
しかし、平郡島まで行っていては今日の漁ができないと、漁師達は船主の村長に言っておくれと言いました。お坊さんはなにやら船主の村長と話をしていましたが、村長は「よく話してくださった」と、島までの乗船を許可しました。
ところが、お坊さんが船に乗ると、船がまるで大漁の時のように沈み込んでしまい、船のヘリが海面に近いところまできてしまいました。漁師達は不思議に思いながらも島へ向けて船を出しました。
島へ向う途中、漁師達はお坊さんが浮田の山奥深くからきたと聞くと、浮田の山奥にある洞窟にはそれは大きな大蛇が夫婦で住んでおって、獣は飲まれ人も襲われで、そんな恐ろしいところで修行していたとは気が知れないと言いました。
すると、黙って話を聞いていたお坊さんは「大蛇とて生き物じゃ。生きるためにほかの生き物を食べるのは当たり前じゃ」と言い、荷物を開けるとその壺の中から、妻の遺灰を撒きはじめました。妻は生まれ変わったら鯛になりたいと言っていたのだという。
やがて船はよい風に煽られて予定より早く平郡島につきました。お坊さんは船をおりると、大蛇の姿を現して漁師達を振り返ってお辞儀をして、島にある池の中に姿を消してしまいました。大蛇は妻を失って寂しくなり、生まれ育った故郷へ戻りたくなったのでしょう。
その後、漁師たちが浮田へ帰る途中に漁を行うと、お坊さんが乗った時と同じように船が沈み込むほど鯛が大漁に捕れたのでした。その後、浮田の漁師たちが平郡島の池の水を汲みに行くと、普段は濁っているのに、透き通るように澄み渡るようになったということです。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-7-3 11:49 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 大分の昔ばなし(三丘社刊)より |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第04巻,川内彩友美,三丘社,1988年09月10日,原題「浮田の大蛇」 |
場所について | 姫島の浮田 |
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