昔、大坂の呉服屋の男が、番頭の使い込みでお店は破産し家族も離散してしまった。
もう一度再出発をしようと、西へ向かってあてもなく旅をしていたが、道ですれ違った男から財布を盗まれてしまった。本当にすっからかんになってしまった男の目の前に、「西つらし、北くらし」と書かれた道しるべがあった。
西へ行っても辛い、北に行っても暗い。人生に絶望した男は、近くのお寺の松の木に縄をかけ首をつって自殺しようとした。そこへ寺の和尚が止めに入り、死のうとした理由を聞くと、笑って言った。その道しるべは「西つらじま、北くらしき」と書かれたもので、沢山の落ち葉が積もって最後の文字が見えなくなっていただけだった。
そこへ、先ほど立ち寄っていた茶店の爺さんが走って追いかけてきて、男の財布を届けてくれた。財布は盗まれたものではなく茶店に落としていただけだった。男は思いなおして、再起を誓って西へ旅立っていった。
10年後、男は商売を成功させた。男は、寺に立派な釣鐘を納め、茶店の爺さんには落とした金とおなじ金額のお礼をした。そして、あの道しるべを見て絶望する人がでないように、「西 連じま、北 倉しき」と漢字で書いた新しい道しるべを作った。
(紅子 2011-12-1 3:01)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 岡山県 |
場所について | 岡山県倉敷市笹沖にある道しるべ |
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