昔々高知の香我美(かがみ)に東光山という山があり、そこに笑い男という笑い声を上げる怪物が住んでいた。笑い男は決まって月の1日、9日、17日に現れたので、村人達はその三日間だけは東光山に入る事を避けた。
ところが土佐藩の船奉行で樋口関太夫(かんだゆう)という侍が、狩りのため9日に東光山へ入ってしまう。これが笑い男の怒りに触れたのか笑い男は毎日東光山に現れるようになり、村人達は山仕事ができずに困り果てた。そこで村の世話役の甚左衛門(じんざえもん)は四日分の握り飯と水を用意し、屈強な二人の若者を連れて東光山へ向かった。
東光山に着くと笑い男が現れ、甚左衛門は笑い男に負けた方が勝った方の言う事を聞くという条件で笑い比べの勝負を挑み、笑い男もこれに応じた。こうして壮絶な笑い比べが始まり、両者の笑い声は山々に響き渡った。
やがて夜になると甚左衛門が疲れてきたので、若者の一人が笑い男に気付かれないよう素早く甚左衛門と交代した。甚左衛門の作戦は一人が笑っている間、他の二人が休憩して笑い男を疲れされるというものであり、三人は握り飯を食っては休み入れ替わっては笑い続けた。
しかし笑い男も負けてはおらず、更に力を入れて笑い返してくる。そうして笑い比べが三日三晩続き四日目の朝、流石の笑い男も笑い疲れ、眠たさと空腹で力が出なくなりとうとう降参した。勝負に勝った甚左衛門は笑い男に、以前と同じ1日、9日、17日以外は東光山に現れないと約束させ、自分達も二度と決まりを破らないと約束した。
その後この約束は長い間守られ、今でも高知の香我美の人達は、月のうち1日と9日と17日の三日間は決して東光山に入らないといわれている。
(投稿者: お伽切草 投稿日時 2012-11-4 23:16 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 高知県 |
場所について | 東光山(地図は適当)この辺にあったらしい |
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