昔々、今で言う兵庫の小野辺りに一人のお婆さんが住んでおり、お婆さんの家近くの小川の向
こうには粗末なお地蔵様が寂しく立っていた。お婆さんは毎日細い小川を越えてはお地蔵様に
お参りするのが日課であり、お地蔵様は一人暮らしのお婆さんの良い話し相手となっていた。
このお婆さんは村でも評判の働き者であったが、ある日ふとした拍子に腰を痛め寝込んでしま
う。腰の痛みは段々ひどくなり、お婆さんはご飯を作るのが精一杯で唯一の楽しみであったお
地蔵様との話もできずにいた。
こうして何日かが過ぎ、少し楽になったお婆さんは久しぶりにお地蔵様へお参りに出かけた。
杖を突きながらようやくお地蔵様の所へやって来ると、伸び放題の雑草に埋もれたお地蔵様の
姿を見て、お婆さんは早速周りの雑草を抜き始めた。お婆さんは腰が痛いのを我慢しつつも少
しづつ雑草を抜いていき、抜き終わった時にはもう夕暮れとなってしまった。
ところが暗くなる前にお婆さんは帰ろうとするも、腰が痛くて来る時には越せた小川がどうし
ても越せない。家に帰れずお婆さんが困っていると、「私が渡してあげましょう。」と後ろか
ら声がする。お婆さんが振り向くとなんとお地蔵様が突然歩き出し、小川の上で橋のようにう
つ伏せになったのである。
お地蔵様を踏んで渡るなど滅相もないとお婆さんは尻込みしたが、お地蔵様は「私も長い間立
ってばかりいて腰が痛くなったので、渡るついでに私の腰を踏んでください。」と言う。そこ
でお婆さんは草履を脱ぎ恐る恐るお地蔵様の腰を踏んでから渡り終えると、不思議な事にあれ
程痛かった腰がすっかり治っていたのであった。
お婆さんはお地蔵様に大変感謝し、また前と同じようにお参りするようになった。この話はい
つしか人々の知る所となり、お地蔵様のご利益が遠くへ伝わると霊験あらたかなお地蔵様とい
う事で、遠い所からも沢山の人々がお参りに訪れるようになったという。
(投稿者: お伽切草 投稿日時 2013-2-10 22:52)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 兵庫県 |
場所について | 小野市高田町 用水路わきのお地蔵様 |
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