昔、伊予の国大州(おおず)の殿様は大変な美食家で、毎日沢山の御馳走を用意させていたが一度も美味しいとは言わず、「明日はもっと旨いものを」などと言っては家来達を困らせていた。その上他にやることがないので体を動かさず、旨いものばかり食べているのですっかり太ってしまっていた。
そこで何とかして殿様に運動してもらおうと城下の見回りに連れ出したものの、殿様は馬上で居眠りばかり。しまいにはそのまま馬から転げ落ち、慌てて駆け寄った家来達の心配顔をよそに相変わらず眠ったままという有り様。
さんざん悩んだ末に家来達は、殿様自ら体を動かすようになるようにと、今度は小田深山(おだみやま)に鷹狩りに連れていった。始めは眠そうだった殿様も、次第に夢中になって兎を追いかけるうちに、すっかりお腹がすいてしまった。
山の中で突然食事の用意を申しつけられた家来達は大慌て。とてもいつものような御馳走は用意できない。ようやく見付けた近くの人家で頼み込むと、その家のお爺さんがうどんを打ち、飯櫃に入れたお湯の中に泳がせて持ってきた。
そんな物とても殿様の口に合わないと思って家来達がハラハラしながら見ていると、体を動かしたことですっかり腹をすかせた殿様は、一口食べるなり「旨い、旨い」と大喜び。あっと言う間に平らげてしまった。
こうして殿様はうどんが大好物になり、又家来達の進言を聞いて体を動かすようになって、太っていた身体も随分と引き締まった。これが小田の手打ちうどんの起こりだという。
(引用:狢工房サイト)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 愛媛県 |
場所について | 喜多郡内子町の小田深山(地図は適当) |
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