昔ある寺に、人の良い小僧さんがいました。
小僧さんは、和尚さんと一緒に檀家さんを回った時に、檀家さん達から少しの小銭をもらう事がありました。小僧さんは、もらった小銭を荒縄で編んだ「サシ」に通して、大切に貯めていました。
ある時、小僧さんはこの銭サシ(ぜにさし)を、どこか安全なところに隠そうと考えました。小僧さんは、毎日の朝晩に鐘を突くので、その鐘つき堂の裏に埋めることにしました。小僧さんは「銭さし、銭さし。私の時は銭でいて、人が見たらカエルになれ」と言って、誰にも見られないように埋めました。
それからの小僧さんは、毎日の日課のように、銭サシを埋めたところにやってきては「銭サシ、銭サシ。私の時は銭でいて、人が見たらカエルになれ」と、呪文のように声をかけました。
ある時、お寺の和尚さんが、小僧さんがこの呪文を唱えている所を目撃しました。和尚さんはちょっとしたイタズラを思い付き、小僧さんの埋めた銭サシを掘り出して、こっそりとカエルと入れ替えておきました。
そうとも知らない小僧さんは、土の中から掘り出した銭サシが本当にカエルになってしまったので、びっくり仰天。逃げ出したカエルを、必死に追いかけていきました。
この様子を見ていた和尚さんは、小僧さんに気づかれぬようにこっそりと元の場所に銭サシを戻しておきました。小僧さんは、無事に銭サシが元の場所に戻っていた事を確認してホッとしました。
その後も、和尚さんはいたずらしたくなりましたが、グッと我慢して過ごしたそうです。
(紅子 2013-11-3 1:49)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 坪田譲治(新潮社刊)より |
出典詳細 | 新百選 日本むかしばなし,坪田譲治,新潮社,1957年8月30日,原題「人が見たらカエルになれ」 |
このお話の評価 | 6.00 (投票数 4) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧