ある小川に「セイショウ」と言う名の大喰らいのフナが住んでいた。
セイショウは口に入るものなら水草であれ、虫であれ、なんでもがつがつと食べる呆れた大喰らいで、時には仲間の食べ物まで奪って腹を満たしていた。フナの長老はそんなセイショウの態度に呆れ、「腹八分目、あまり食べ過ぎぬが身の為じゃ」と諭していたが、セイショウは聞く耳も持たなかった。
ある時セイショウは不思議な夢を見た。それは「4本の柱が天から降って来て、その柱の上の屋根にセイショウが引きずりあげられ、さらさらと雪が降ったと思ったら濁った水の中に真っ逆さまに叩き落される」と言う夢だった。
何かのお告げかも知れない、と長老に言われたセイショウは、長老の勧めに従ってカジカ(カジカガエル)の占い師に夢占いをして貰う事になった。カジカの占いの結果は「食べ物に気をつけないと命に関わる」。それを聞いたセイショウは「わざわざ占ってもらう程の事じゃ無かった」と腹を立て、占いの代金も払わずに帰ってしまう。
ところが、その帰り道にセイショウが見つけたのは、今まで見た事も無い大きなミミズだった。散々迷った挙句セイショウは「これからは喰い物に気をつけるにしても、このミミズくらいは良いだろう」と思い、早速ミミズにかぶりついた。
だが、そのミミズはやはり釣り人が垂れた釣り餌だった。釣り針が唇に引っ掛かったセイショウはあっと言う間に釣りあげられてしまう。そして、まな板の上に乗せられ、包丁で鱗を剥がされ、そして煮立った味噌汁の中にドボン!と落とされてしまったのだった。
セイショウの見た夢・・・4本の柱に支えられた屋根とはまな板の事、さらさら降る雪とは剥がされた自分の鱗が落ちる様子、そして濁った水とは味噌汁の事であったと言う事だ。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2012-10-26 7:45)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 今村義孝(未来社刊)より |
出典詳細 | 秋田むがしこ 第一集(日本の昔話09),今村義孝,未来社,1959年9月30日,原題「小鮒の夢」,採録地「仙北郡南外村」,話者「堀井徳五郎」 |
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