昔ある町に、あこぎな商売で儲けている瀬戸物屋の男がいました。
ある時、店にやって来た爺さんが、商品のお神酒徳利(おみきどっくり)に指を突っ込んだまま、どうしても抜けなくなりました。瀬戸物屋の男は、爺さんが三百文という大金を持っている事を知ると「もう徳利を買うしかないね」と、三百文という高額な値段で売りつけました。
爺さんは、せっかく町でニワトリを買おうと思って買い物に来たのに、全財産を瀬戸物屋の男にとられてしまいました。爺さんは徳利を持って、しょんぼりして自宅へ帰っていきました。
瀬戸物屋の男は「爺さんがどんな顔して家に帰るのか」と、こっそり後をつけて行きました。爺さんの家の中は薄暗くて、外からは家の中の様子が見えませんでした。そこで瀬戸物屋の男は、格子窓からむりやり頭を突っ込んで、家の中を覗き込みました。
そのうち、爺さんの指は徳利からすこんと抜けました。すると今度は、瀬戸物屋の男の頭が格子窓から抜けなくなりました。手足をジタバタさせてもどうしても抜けず、瀬戸物屋の男は焦りました。
瀬戸物屋の男は「どうやっても抜けないから、格子窓の柵を切ってくれ」と、爺さんに頼みました。すると爺さんは「ほんなら修理代として三百文もらっとこうか」と、瀬戸物屋の男をやりこめました。
爺さんは、三百文も返ってきたうえに、神棚には新品のお神酒徳利が並びました。これに懲りた瀬戸物屋の男も、それからは正直に商売をしたそうです。
(紅子 2013-9-24 0:14)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 浜口一夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 佐渡の民話 第二集(日本の民話69),浜口一夫,未来社,1978年08月25日,原題「ぬけない指」,採録地「相川町小野見」,話者「斎藤クニ」 |
場所について | 相川町小野見(現在の佐渡市小野見) |
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