No.0102
たろまるのはなし
たろ丸の話
高ヒット
放送回:0063-A  放送日:1976年12月18日(昭和51年12月18日)
演出:樋口雅一  文芸:沖島勲  美術:青木稔  作画:森田浩光
要調査 / 静岡県 ) 54729hit
あらすじ

伊豆の民話(未来社,1957年11月25日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。

むかし、天城の狩場に早撃ちの新と呼ばれる狩人がおり、獲物の群れを見つけると、続けざまに撃って逃げる隙も与えないほどの腕前でした。新の小屋は深い山間にあり、おかみさんと赤ん坊と狩犬とで暮らしていました。犬の名前はたろ丸といい、主人の言うことは何でもよく分かる利口な犬でした。また、主人が道に迷った時なども自分の小屋の方角を知っていて、主人を案内するのでした。

或る時、新のかみさんが病気になり、山奥のことでもあって、医者にかかれないまま、亡くなってしまいました。新は小屋のほとりにかみさんの墓を作り、菩提を弔いました。これからは赤ん坊を一人でみなければなりません。新はたろ丸に言いました。「たろよ。今日は留守してくりょう。赤のそばについててくりょうよ。俺が帰ってくるまで、どこにも行かずに、赤のそばで守りをしてくりょうよ」たろ丸は尻尾を振って、赤ん坊のそばにジッと寄り添いました。そして、心得た顔つきで、赤ん坊のよだれの垂れたアゴの辺りをペロリと舐めてやったり、ときどき外の物音に耳を澄ませたりする様子でした。それを見た新は「ほんのしばらくの間だから」と言って小屋を後にしました。

ところが、思いもかけないことから狩りは三日もかかってしまいました。獲物を追って足を滑らせ、深い谷へと落ちてしまったのです。気が付いた時には辺りは真っ暗で、星が瞬いていました。「こりゃあ、困ったことになった」と、新は赤ん坊やたろ丸のことが心配でたまりません。体を起こそうとすると、腰を強く打ったと見えて、立ち上がることもできず、それでも重い体を引きずって、谷川の水でノドを潤しました。少し動いたせいか、腰の痛みも激しくなり、その日は谷を上がることもできずに過ごしました。その次の日は鉄砲を杖にして立ち上がり、一歩あるいては休み、二歩あるいては一息入れ、やっと、谷底から這い上がった頃にはもう夕方になっていました。

でも、新は元気を出しました。谷底から這い上がることができれば、後は小屋までの杣道。鉄砲を杖にして行けば、いくらかは苦しくても、何とか帰り着くことができる。新は待たせている赤ん坊とたろ丸の身を案じながら、力を振り絞って、ようやく小屋へとたどり着くことができました。しかし、小屋の様子はひどい有様で、戸は押し倒され、辺りには点々と赤い雫が落ちています。よく見ると、それは血の跡でした。その時、薄暗い小屋の中から、のそりと物の動く気配がしました。目を凝らすと、そこにはたろ丸がいました。いつもなら、駆けてきて飛びつくのに、何か様子が変でした。たろ丸の口元を見ると赤く、体中にも赤い血でまみれていました。

それを見て、新はハッとしました。「おのれ。三日も留守にしたで、空腹に耐えきれず、赤を食うたな」と叫ぶや否や、自分が杖にしていた鉄砲を握りしめ、いきなりたろ丸の頭へと打ちおろしました。たろ丸は低くうめいて倒れ、ヒクヒクと手足を震わせました。その時、小屋の隅の方で赤ん坊の泣く声がしました。見ると、赤ん坊のカゴが隅に押し付けられており、その中で赤ん坊が愛らしい口元を大きく開けて泣いていました。そして、そのカゴのすぐ近くには二匹の山犬が転がっており、噛み裂かれた血まみれの姿で死んでおりました。たろ丸は主人の子を守って、山犬と戦い、倒していたのでした。

新はオオウと呻いて、たろ丸に駆け寄り、抱きしめました。たろ丸は山犬との戦いで深手を負い、新の一撃ですっかり事切れてしまっていました。その後、新はふっつりと狩人をやめて、里に下りました。「おらぁ、犬にも劣る人間よ」会う人ごとに、新はこういって涙を落としたということです。

(投稿者: araya 投稿日時 2011-12-20 1:55 )


参考URL(1)
http://d.hatena.ne.jp/manga-do/20060307
ナレーション市原悦子
出典岸なみ(未来社刊)より
出典詳細伊豆の民話(日本の民話04),岸なみ,未来社,1957年11月25日,原題「たろ丸の話」,採録地「湯ヶ島長野」
場所について静岡県伊豆市湯ケ島長野(地図は適当)
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地図:静岡県伊豆市湯ケ島長野(地図は適当)
追加情報
このお話の評価9.3548 9.35 (投票数 31) ⇒投票する
※掲載情報は 2011/12/20 3:27 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
8件表示 (全8件)
ゲスト  投稿日時 2021/2/25 8:14
自分も たろ丸の話を時々思い出します。DVDで観たい気もありますが 可愛そ過ぎて実際には観れないと思います。
ゲスト  投稿日時 2017/8/4 1:12 | 最終変更
私は、この話を母から聞いてすぐ調べました。
とても悲しい話でしたが、この新という人を憎めずこの人はずっとこのトラウマを抱えて生きていくと考えるとこの先長いけど、たろ丸の分もちゃんと生きてほしいと思いました!

この話は、私にとって心に残る作品です!!
ゲスト  投稿日時 2017/3/31 16:39
ゲームも昔ばなしも所詮フィクション、ただの娯楽です
現実とフィクションや空想をいちいちごっちゃにして「命が軽く扱われている」とかやめてください
人間は愚かだとか犬や猫の方が恩を忘れない、裏切らないというのには同意ですけどね
ゲスト  投稿日時 2016/12/24 21:10
このお話は『たろまるの話』だと娘が調べてくれて、ここにたどり着きました。
当時、犬の名前は『しろ』だと記憶していたため子供達には昔話で感動したのは
犬のしろの話だよ、と言っていました。
このお話をテレビで観た日、ずっと「しろー!」って言って泣いてました。
あまりにもしつこく泣くので家族から怒られました。
映像が無いとのことで残念ですが、、
こうして再び『たろまるの話』と知ることが出来て嬉しく思います。
たろ丸大好き  投稿日時 2016/10/2 6:43
今朝 たろ丸の話が 急に思いだされ 調べたら こちらに着きました。
幼いころ テレビで見て たろ丸の 赤子を守りながら 信じてた飼い主に打ち殺される
現代も似た事件がありますが
後悔の飼い主 新さん
もう 一番忘れることのできないお話しです。 子供の頃 犬をみてはたろ丸を 思い出し たろ丸
よく頑張ったね かわいそうに と どうして 確認しないですぐ 銃でころすのかな?
子供心に 不思議でした だからか 子育てでも 仕事場でも なにかおこると たろ丸を思い出し
冷静に この目で確認あせらず 決めつけない 事 が できるのは たろ丸の お蔭です
たろ丸を殺した 信さんの後悔は 命は戻らない 恐怖 子供心に 犬や猫の恩返しに報いる人になりたいな と 思い込みですぐ 判断しては とんでもないことになるんだと 子供心に焼き付けた
思い出の お話しです。
画像がなくてとても残念です。
今も たろ丸が ご主人をまち でむいた喜びの表情 打たれて倒れる姿
赤子を野犬から 守る たろ丸 今も涙が止まりません
人の琴線を深く揺さぶる話  また 人間の愚かな姿は 世界共通でないでしょうか?
52歳の私たち世代は まんが昔話をみながら 優しい心 人間として 誇りと知性を忘れない
自然への敬意 犬 猫 のほうが 恩を忘れない 家族を守る 裏切らない
言葉は話せなくても 犬 猫 達は 人間より 恩義の強さ忠誠心を もっています。
今は ゲームのバーチャルの世界で 殺しては生き返るの繰り返しで
命が 簡単に扱われてます
日本の未来のためにも まんが昔話の たろ丸 の映像を 作りなおして 欲しいです
お願いします。
ゲスト  投稿日時 2016/5/8 13:57
やっとタイトルわかりました。
小さい時に一度観て、涙が止まらなかった話しだったので覚えていました。
犬、赤子、猟師、留守番で探すも、検索出来なかったから、見つかってうれしいです。なぜ、この話しが映像で残ってないのか、不思議ですね。自分にとっては一番の名作ですね。
夢ばく  投稿日時 2016/3/28 13:29
子供の頃に見て…49歳になる今まで ず~っと 心に残っていたお話。

あまりにも 辛く 悲しいお話。

友達や姉弟に話して聞かせたことがあるんだけど…そのたびに 声を詰まらせて…泣くのを堪えるのがやっとだった。

昨日 スマホで調べて やっと!このお話の題名がわかったときは…ほんとに ほんとに 嬉しかった。

改めて読んで…

やっぱり…辛く 悲しいお話。

『なんで!!どうして!!こんなことに…』

書き込みしている今も…涙が止まらん。

そんなお話。
ゲスト  投稿日時 2015/12/28 17:32
自分が7才の時にテレビで見ました。余りにもかわいそうなお話で、見終わった後に台所にいた母親にストーリーを話しに行ったのを覚えています。
この歳になっても、タロ丸の話は時々思い出します。
数年前にネットでタロ丸の話を検索出来たとき、小学生の頃の思い出がよみがえり、とてもうれしかったです。
自分の幼少期に多大なる影響を与えた番組でした。
以上です
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