昔、山の頂きにある村がありました。
この村では、畑が山の斜面につくられていので、雨が降るたびに肥えた土が流されてしまい、すっかり畑の土は痩せていました。畑で育つ大根も、まるでごぼうのようにヒョロヒョロの細いものでした。
この村に住む千吉という若者は、何度肥やしをやっても同じことの繰り返しなので、すっかり嫌気がさしてきました。父親からたしなめられても、千吉は肥やしをまかなくなってしまいました。
ある晩、隣村からの帰り道、千吉は畑の上を飛び回る白い化けものを見つけました。この話を聞いた村の若者のゴンベエと平太とともに、次の日の夜に化けもの退治にでかけました。
三人は、酒を飲みながら畑で待ち続けましたが、なかなか化けものは現れませんでした。千吉が諦めてひとり帰ろうと畑を歩き出すと、頭に笠をかぶったまっ白な化け物が現れました。
化けものは「こえをかけろぉー」と言いながら、千吉たちを追っかけはじめました。追い詰められた千吉が「わかった、声をかけてやる!うぉぉぉーい!」と大声で叫ぶと、まっ白な化けものはやせ細った大根に変わりました。
化けものの正体は、以前に千吉が引っこ抜いて捨てていた大根でした。痩せた大根が「肥やしをかけろー」と言っていたのです。
それからの三人は、雨が降ってもめげずに肥やしをまくようになりました。それからというもの、太った大きな大根や芋がたくさん取れるようになったということです。
(紅子 2013-12-27 23:26)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 下野敏見(未来社刊)より |
出典詳細 | 屋久島の民話 第二集(日本の民話38),下野敏見,未来社,1965年02月25日,原題「化けもの退治」,採録地「屋久町麦生」,話者「市橋祐光」 |
備考 | 冒頭切れてるけど出典元は台本で確認 |
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