むかしむかし、大きな森と大きな原っぱに鳥の国と獣の国があって、ある時、二つの国が領土をめぐって戦になった。獣達は、賢くて戦の駆け引きに長けた狐を大将にした。そうして、狐が尻尾を上げたら進撃する、尻尾を下げたら退却するという秘密の合図を決めて、戦に備えた。
一方、鳥達は年寄りで考え深い梟(フクロウ)を大将に選んだ。ところが、鳳凰(ホウオウ)という鳥が梟に、「あんたは昼は目が見えんから、夜の大将になれ。そうして儂を昼の大将にしてくれ。そうしてくれたら、来年の秋に大豆を5斗(1斗=約18?)あげよう。」ともちかけた。すると梟はその話を承知してしもうたそうな。
こうして鳥の大将は、昼は鳳凰、夜は梟となった。そんな二羽の元に一匹の蜂が訪ねてきて、自分は羽があるので鳥の味方になって、良い作戦を教えてやろうと言った。そこで、鳳凰と梟は蜂からその作戦を教えてもらった。
こうして鳥と獣の戦が始まった。「進め~!」狐が尻尾をピンと上げて命令すると、獣達は一気に進撃を開始した。ところがそこに蜂が現れて、狐の尻尾を針で刺したからたまらない。狐はあまりの痛さに、思わず尻尾を下げてしもうた。獣達は驚いたが、大将の命令なので慌てて退却したそうな。
それからも何度も、狐が尻尾を上げる⇒獣達が進撃する⇒蜂が狐の尻尾を刺す⇒狐が尻尾を下げる⇒獣達が退却する、ということが繰り返され、獣達はへとへとに疲れてしまった。すかさず昼間の大将である鳳凰の命令で鳥達が襲いかかり、獣達は総崩れになった。戦は鳥達の大勝利となり、鳳凰は鳥と獣の王になった。一方、狐の尻尾は蜂に刺されて腫れあがり、太くなってしまった。
翌年の秋、王となった鳳凰の元に、約束の大豆を貰うために梟がやってきた。ところが鳳凰は梟を全く相手にせんかったんじゃと。梟は怒って、それで今でも「ごろつき鳳凰、嘘つき鳳凰」と鳴いて飛びまわっておるそうじゃ。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2013-6-16 17:02 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 瀬川拓男(角川書店刊)より |
出典詳細 | 動物の世界(日本の民話01),瀬川拓男,角川書店,1973年5年20日,原題「鳥と獣の戦争」,伝承地「中国地方」 |
![]() |
⇒ 全スレッド一覧