昔ある寺に和尚さんと小僧さんが住んでいた。
小僧さんは早く良いお坊さんになりたくて毎日一生懸命お経を勉強していたが、この小僧さん物覚えが悪くなかなかお経を覚えられなかった。それでも小僧さんは、昼も夜もなく毎日必死にお経を勉強していた。そしてある日お経を呼んでいると、初めて和尚さんに誉められ、小僧さんは喜んでさらに勉強に取り組んだ。
ある日、海辺の崖でお経を読んでいると、風が吹いて経本が松の木のてっぺんに飛んでしまった。小僧さんは経本を取ろうと松の木に登ったが、足を滑らせて海に落ちてしまった。和尚さんが来た時は小僧さんの着物だけが残されており、崖下の海にはわらじが浮いていた。
和尚さんは悲しみ、小僧さんの着物を寺の庭に埋めて墓を作り、そこに木を一本植えた。そしてその墓に向かって毎日経を読んでいると、その木はどんどん大きくなりやがて寺の屋根を越すほどの大きさになった。
しかし、ある時大嵐が来て、小僧さんの木はばったりと倒れてしまった。和尚さんはその木を切り、幹の一番太い部分を寺に運び、何やら彫りだした。そして一ヶ月かかって作りあげたのは魚の形をした彫り物だった。
小僧さんは海にはまって死んだので、もう魚に生まれ変わってこの世にいると和尚さんは思ったのだ。そしてこれからもお経を教えてやるぞと言って、その彫り物をぽんぽんと優しく叩きながら経を読んだ。
後にこのことを伝え聞いた人々が、その魚の彫り物を木の魚「木魚」と呼び、和尚さんと小僧さんの深いつながりを語り伝えたということだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 京都府 |
DVD情報 | DVD-BOX第9集(DVD第45巻) |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第093巻(発刊日:1988年1月) |
講談社の300より | 書籍によると「京都府のお話」 |
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