昔、一人の六部(巡礼の僧)が、山奥の古びたお堂の軒下で野宿することにしました。
すると、どこからか地獄の鬼どもが現れて、米屋の娘を鉄棒で殴り始めました。「升の目を盗んだことを思い知れ!」「秤の目を盗んだことを思い知れ!」と、娘を殴り倒すのです。
この様子を震えながら見ていた六部は、翌朝さっそく町へおり、最近娘が死んだ米屋を訪ねました。昨夜の様子を父親に話すのですが、「死んだ娘がナゼ鬼から責め苦を受けるのか?」と信じてもらえず、二人でもう一度、山のお堂へ行ってみることになりました。
夜が更けると、やはり鬼どもが出てきて、今度は娘を釜茹でにしていました。死んでもなお、鬼から攻め続けられる娘は、悲しい悲鳴をあげながら耐えていました。これを見た父親は、升や秤を小さく作って計量をごまかしていたことを告白し、心から反省しました。
翌日、町に戻った父親は、蔵の中から貯め込んだ米や味噌や反物などを町の人たちに無料で配りました。そしてお堂の前で一生懸命、娘のためにお祈りしました。この懺悔により、娘は無事に天国へのぼっていく事ができました。
(紅子 2011-12-31 2:56)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 瀬川拓男(角川書店刊)より |
出典詳細 | 妖怪と人間(日本の民話07),瀬川拓男,角川書店,1973年4年20日,原題「地獄の鬼」,伝承地「中部地方」 |
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