昔ある所に、たいそうな長者がいて、広い畑と大勢の使用人を持っていました。この長者は大変な金持ちでしたが、干した菜っ葉ばかりの雑炊を使用人に与えて、朝から晩までくたくたになるまで働かせていました。
長者の毎朝の日課は、大黒様におまいりする事でした。ある時、長者はいままでの倍以上も儲けようと、使用人を倍以上働かせることを決心しました。使用人の食事も、米粒は少量で菜っ葉の量を大盛りに増やした、うすい雑炊となりました。
そんなある朝の事、干してあった菜っ葉がめちゃめちゃに踏み散らかされていました。怒った長者は、使用人が犯人だろうと決めつけ、菜っ葉すら入ってない汁だけの雑炊を食わせました。ところが、その後も菜っ葉は踏み散らされ続けました。
長者は犯人を捕まえようと、物陰に隠れて菜っ葉の入った大ざるを見張る事にしました。夜も更けたころ、菜っ葉のざるに手をかける黒い人影が見えました。長者が手にしていた矢を放つと、黒い影は「うっ!」と声を発し、その姿は消えてしまいました。
矢が当たったはずなのに、と、長者は不思議に思いました。この事を大黒様に相談しようと、大黒様の前にやってくると、長者の矢が大黒様の胸に突き刺さっていました。「あ、あの影は大黒様だったのか!」と驚いた長者は、あまりの恐ろしさにそのまま気を失ってしまいました。
その間に、大黒様は蔵から千両箱と米俵を運び出し、目を覚まして集まってきた使用人たちに分け与えました。「仲良く分け合って、ここを立ち去るがよいぞ」と言い残し、大黒様もどこかへ去っていきました。
4日後、ようやく目覚めた長者が屋敷を見渡すと、誰一人と屋敷には残っていませんでした。その後、この長者の屋敷は人手に渡り、長者はすべてを失って、一人どこかへ行ってしまいました。
(紅子※講談社の決定版100より 2013-7-5 2:10)
ナレーション | 未見のため不明 |
出典 | クレジット不明 |
本の情報 | 講談社テレビ名作えほん第045巻(発刊日:1981年4月) |
講談社の300より | 書籍によると「島根県のお話」 |
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