昔ある所に、爺さんとその息子が住んでいました。
ある冬の朝、かまどの釜でご飯を炊いていると、お釜が何やら歌い始めました。「古塚を掘ったら、宝がざっくざく」といった感じで、お宝のありかを歌っていました。
さっそく息子が、お釜の歌っていた場所にいって掘ってみました。すると、地中から大きな壺が出てきましたがその中身はただの泥でした。実はお釜の歌には、まだ続きがあったのです。
今度は爺さんと息子のふたりで、また別の宝のあるという場所へ行ってみました。広い野原を手あたり次第に掘っているうちに、とうとう地中から大きな壺を掘り当てました。二人は、期待しつつ壺の中をのぞいてみると、やっぱり今度も泥が詰まっているだけでした。
そういえば、お釜の歌は最後に「そんな話も一昔」と、過去の話として歌っていたことに気が付きました。宝が出てこない事がわかった二人は、がっかりしてとぼとぼ家に帰ってきました。
お釜が「一昔」と最後まで歌う前に、お釜を縛って歌わせないようにすれば、本当にお宝は出てくるのです。この事から「お釜が歌い始めたら、縛ってしまえば福が来る」と、言われるようになったそうです。
(紅子 2013-7-22 0:10)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 片平幸三(未来社刊)より |
出典詳細 | 福島の民話 第二集(日本の民話42),片平幸三,未来社,1966年09月30日,原題「お釜の歌」,採録地「相馬郡」 |
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