お菊は犀川に架けられた久米路橋のほとりに住んでいました。その頃村人の暮しは一様に貧しい生活でした。そして、お菊の家もまた貧しかったのです。
あるとき村の金持ちの倉から小豆が一俵盗まれました。役人達は小豆泥棒をつかまえるためにお菊の村へやって来ました。お菊は村の子供達と遊びながら「おらあ毎日小豆のまんまを食べているだ」と話しました。
それを聞きつけた役人達は、お菊の父を犯人として牢獄へいれてしまいました。その頃の久米路橋は、大雨の降る度ごとに流されていました。そこで村の人達は集って「水神の怒りを鎮めるために、橋の下に人柱を沈める必要がある」として、罪人であるお菊の父を犀川に架ける久米路橋の支柱の下へ埋めてしまいました。
父親を久米路橋の人柱にされたお菊は、それから以後、唖のように物を言わなくなってしまいました。その後、雉の鳴声をたよりに狩人が、その雉を射とめたとき、それを見てお菊はたったひとこと口をきいたのです。
「雉も鳴かずばうたれまいものを」と言ったきり、また唖のようにだまってしまったそうな。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 信州の伝説(角川書店刊)より |
出典詳細 | 信州の伝説(日本の伝説03),大川悦生,角川書店,1976年2年10日,原題「もの言わぬお菊」 |
場所について | 長野県犀川にかかる久米路橋 |
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