むかしむかし、淡路の木曽の原という所にオヨイと伊衛門という狸の夫婦がおりました。
女房のオヨイの方は亭主思いでたいそう気立てが優しいのですが、亭主の伊衛門の方は怠けてばかりいました。そして暇を持て余しては女房が止めるのも聞かず、出かけて行っては村人を化かしたり騙したりして面白がり、近頃は悪戯が過ぎるので村人達を困らせるようになっていました。
そこで、いくら言っても聞かない伊衛門に、女房のオヨイはいつも色々世話になっている庄屋さんに頼んでうんと説教して貰うことにしました。なのに伊衛門は庄屋さんの話もまともに聞かず、女房の心配をよそに益々悪くなって人間を化かしていました。
その為、もう村人達の我慢も限界まで来ていました。そこで庄屋さんは、女房のオヨイに会いに行き、亭主を化かすようお願いしました。オヨイも亭主が鉄砲で撃たれて殺されるのは困るので、当時最も強いと噂のある、きよしげ様に化けることになりました。
そしてその夜のこと、幽霊に化けた伊衛門は、女房が化けたきよしげ様とも知らず驚かそうとしましたが、逆に見抜かれてひどい目に遭い、すごく怖い思いをして気絶してしまいました。女房に介抱された伊衛門は、その後改心しましたが、時々悪い癖が出てたまに里に下りて人を化かそうとするとその度女房に「きよしげ様が来るよ。」と言って叱られていたということです。
(投稿者: 迦楼羅 投稿日時 2013-1-23 1:43 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 宮崎修二朗(未来社刊)より |
出典詳細 | 兵庫の民話(日本の民話25),宮崎修二朗、徳山静子,未来社,1960年01月31日,原題「伊右衛門だぬき」,採録地「三原郡」,味地草より |
場所について | 淡路の木曽の原 |
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