むかし、あるところに一人の山伏が山を登っていた。
一本松があるところにやってくると、松の根元でなにやら音がする。覗き込んでみると一匹の子狸がすやすやと気持ちよさそうに昼寝をしていた。そっとその場を去ろうとした山伏だったが、ふと悪戯心がわき、眠っている子狸の耳元で思いっきり「法螺貝(ほらがい)」を吹いて、驚かした。
子狸はびっくり仰天して、しばらく呆然としていたが、山伏を睨みつけてから藪の中へ姿を消した。山伏は、驚いた子狸に満足して、再び歩き出した。
ところがしばらく行くと、林の中で突然空が真っ暗になってしまった。山伏はまだ昼だったのと思ったのにこんなに早く日が暮れるとは不思議なこともあるものだと思いながらも、今夜の宿を探さなくてはと思っていると、前に明かりが見える。民家かと思いきや、なんとその明かりは葬列だった。
葬列は、山伏がいる木の近くまでやって来ると棺桶を埋めて去っていった。居心地が悪くなった山伏はその場から早々に立ち去ろうとすると、棺桶から幽霊が現れて山伏をどこまでもどこまでも追いかけてくる。真っ青になった山伏は木のてっぺんまで逃げるが、枝が折れて山伏は転落してしまった。
気がつくと、空は元通り明るく太陽が照りつけるなか山伏は倒れていた。「わしは一体何をしておったんだ」と山伏は、打ち付けた足を引きずり、また山を登っていった。
おおかた、気持ちよく寝ていたのを邪魔された子狸が仕返しをしたんじゃろう。
(投稿者: もみじ 投稿日時 2012-6-18 14:48 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松谷みよ子(講談社刊)より |
出典詳細 | 日本のむかし話1(松谷みよ子のむかしむかし01),松谷みよ子,講談社,1973年11月20日,原題「山伏と小っこだぬき」 |
本の情報 | サラ文庫まんが日本昔ばなし第23巻-第113話(発刊日:1978年8月15日) |
サラ文庫の絵本より | 絵本巻頭の解説には地名の明記はない |
8.00 (投票数 2) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧