昔ある小さな村にほらをふくのが好きな和尚がおりました。和尚は朝昼夜にほらをいうので、村人も子坊主も呆れてしまい、真剣に話を聞くものはいませんでした。
ある時、和尚はまたほらを思いつき、寺の前にある池からいついつに龍が立ち昇るという嘘を書いた札を作り池の前に立てました。
その池には以前から龍が住むといわれていたが、本当に住むものかどうか誰も知りません。
そのためこの立て札は噂になり、そこに書かれた日のその時刻前には、村中から人が集まり池の周りに人だかりができました。
これを見て和尚は独り満足し、内心喜んでおりました。
しかし、いよいよその時刻が近づくにつれて不思議な事が起こりました。先ほどまで天気が良かったものが風が出て雲を呼び雨が降り嵐のようになりました。池の水は白波立ち、池の中央から本当に龍が現れ空高く立ち昇り消えていきました。そして嵐が去ってあたりはまた元のように鎮まりかえりました。
和尚は、この札を書いたのはわしなんだと皆に説明しだすが、誰一人信じる者はなく、和尚は却ってさらに信用を失ってしまいました。
(投稿者:もののけ師 投稿日時 2014/6/18 17:02)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 松岡利夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 周防・長門の民話 第二集(日本の民話46),松岡利夫,未来社,1969年10月20日,原題「ほらふき和尚」,採録地「大津郡、美弥郡」,話者「福永カネ、坂本宇平」 |
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