昔ある所に、百姓仕事そっちのけで、猟が大好きな清三という男がいた。
ある稲刈りの時期、2人は「鴨ふせ」をすることにした。「鴨ふせ」とは明け方、鴨が餌を求めて田んぼの低い所を飛んでいるのを網で捕らえる猟である。清三は鴨ふせが楽しみで早めに寝たが、興奮して眠れず、暗い内から一人で鴨ふせに出掛けた。
田んぼに着くとまだ鴨は来ていなかったが、清三は待切れず持って来た鉄砲をぶっぱなし、それに驚いた鴨がたくさん田んぼに出てきた。そして清三は夢中で鴨を捕り、袋はあっと言う間に鴨で一杯になった。
だがその時どこからか「鴨返せ~」という声が聞こえてきた。清三が振り向くとそこにはひとつ目の赤い大きな化け物が立っていた。清三は驚いて逃げ出し、いつの間にかごんすけの家の前に来ていた。するとごんすけが出て来て鴨ふせに行くと言う。清三は今の化け物の話をし、行ってはならないと言ったがごんすけは聞かなかった。
そして田んぼに着くとごんすけは、さっき見たのはどんな化け物だったか、と清三に聞いた。清三はひとつ目の赤い大きな化け物だったと答えると、ごんすけは振り向きたちまち赤いひとつ目の化け物に変わった。清三はもう肝をつぶして逃げ出し、どこをどう走っているかも分からなかった。
そして日が上り、気が着くとまたごんすけの家の前に来ていた。ごんすけが清三を見て笑うと清三は「あ、あ、あ、赤ぼうれ~!」と叫んで逃げてしまった。ごんすけは寝過ごしたのであやまろうと思ったが逃げた清三を不思議に思っていた。
後にこの事を聞いた村人は「それは清三がむやみに殺生ばかりするから清滝山の神様が怒ったんだ」と言い、あまりむやみに殺生することをいましめたそうだ。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 市原麟一郎(未来社刊)より |
出典詳細 | 土佐の民話 第一集(日本の民話53),市原麟一郎,未来社,1974年06月10日,原題「清滝山の赤ぼうれ」,採録地「土佐市」,話者「馬場保恵」 |
場所について | 土佐の清滝山 |
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