昔むかし、徳島の海に仲の良いふぐとひらめがおりました。2匹ともたくさんの子供や孫に恵まれて長生きをした後、寿命がきてあの世にも一緒に仲良く旅立つ事になりました。
2匹が暗闇の中を光の方へ引き寄せられるように漂っていくと、穴の向こうに三途の川が開け、ほとりには川守のババがおりました。ババとあの世の極楽と地獄の話をしますが、2匹は正直に生きてきた自分達は極楽に行けるだろうと安心していました。
ババに借りた舟に乗って三途の川の向こう側に着くと、鬼たちに連れられて行き、閻魔様の前で2匹の裁きが始まりました。ひらめは人間によく食べられて良い魚だという事で極楽行きに決まりましたが、ふぐのほうは、鬼の入れ知恵でふぐ刺しをツマミに地獄で一杯やりたくなった閻魔様が、ふぐは毒で人を殺すなどと言って地獄行きにしてしまいました。
理不尽な理由に承知できないふぐは考え、地獄に行く前に一目極楽を見たいという願いをとりつけました。そして鬼に連れられて極楽の立派な門の前にくると、鬼が重い門を押すためにくふぐから手を放した隙に、門の開いた隙間を通ってするりと極楽の中に入りました。
ちょうどこの時日暮れの鐘とともに門が閉じ始め、ふぐは門の向こう側であわてる鬼に向かってこう言ってやりました。
「鬼は外、ふぐは内」
閉じてしまった門は朝まで開きませんので鬼はがっかりして諦め、ふぐは待っていたひらめと無事揃って極楽の中へ泳いでいきました。
(投稿者: ひかる 投稿日時 2012-2-3 23:27 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 柴口成浩「東瀬戸内の昔話」より |
出典詳細 | 東瀬戸内の昔話(日本の昔話 第12巻),柴口成浩・仙田実・山内靖子,日本放送出版協会,1975年08月20日,原題「ふぐとひらめ」 |
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