ある山の中に、綺麗な水が湧く池がありました。池の水は、山に生きるサルの群れにとってかけがえの無い飲み水になっておりました。
ある時、酷い嵐が起こって、雨風と共に恐ろしい魔物がやって来て池に住み着いてしまいました。水を飲みにやって来たサルが足を滑らせて池に落ちるや、魔物が現れて池の底に引きずり込むようになったので、サルたちは恐ろしがって池に近づかないようにしました。
腕白な子ザルたちが年寄りザルの目を盗んで池に近づきましたが、矢張り魔物が現れて、三ちゃんと言う子ザルを池に引き込もうとしました。子ザルたちは互いに力を合わせて三ちゃんを助け出し、命からがら逃げ伸びました。
然し子ザルたちは池の水が飲みたくてたまりません。皆で嘆いて居ると、そこへ年寄りザルがやって来て「めいめいで長い芦の茎を1本ずつ取って来なさい」と言いました。子ザルたちが言われた通りにすると、年寄りザルは芦の茎から穂をはぎ取り、息を吹き込んで通りを良くし、細長い筒をこしらえて見せました。
そして子ザルたちと共にその芦の筒を持って池に行き、魔物の手が届かない土手の上から筒を水面に刺し込んで「ここから筒を思いっきり吸ってご覧。美味しい水が飲めるから」と教えました。子ザルたちが言われた通り筒を吸いますと、口の中に水がごくん、ごくんと入って来ます。
サルたちが芦の筒で水を飲んでいるのを見て魔物はサルたちを池に引き込もうと襲いかかりましたが、魔物は水の中から出る事が出来ないらしく、その手は虚しく土手をかきむしるだけでした。
こうして、サルたちは危ない目に遭わずに水が飲めるようになりました。そして魔物はと言うと、年寄りザルの知恵に降参したのか、いつの間にか池から姿を消してしまったと言う事です。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2014-1-8 7:25 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 東京の昔ばなし(三丘社刊)より |
出典詳細 | 里の語りべ聞き書き 第04巻,川内彩友美,三丘社,1988年09月10日,原題「サルと池」 |
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