村はずれの沼近くに貧しいながらも猟師の父娘が仲良く暮らしていた。
見かけぬ男が何度もやって来て沼の鶴を狩れば金になるとそそのかすが、領主に知られればお咎めを受ける事になると親娘は聞き流していた。
そんなある日、娘おたえの縁談がまとまるものの、折からの豪雪続きで親娘の生活はますます貧窮し、娘の婚儀の支度金欲しさに猟師は鶴の密猟に手を出してしまう。
何も知らずに父に買い与えられた白い反物で喜んで花嫁衣装を縫うおたえだったが、ある晩父の所業を知り、自分は何もいらないからどうか鶴を撃たないでくれと懇願する。しかし欲にかられた猟師はいつまでも鶴猟をやめない。
どうしても父を止める事ができぬと悟ったおたえはひとしきり泣いた後、決心したように花嫁衣装に着替え、父の出かけた狩場の沼地へと後を追う。
猟師は沼地でまたもや白い鶴を撃つが、そこに倒れているのは白い花嫁衣装の娘だった。猟師は亡骸の前で泣き崩れ、その沼に鶴が訪れる事もなくなった。
(投稿者: ひかる 投稿日時 2012-1-25 18:56 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 和歌山の伝説(日本標準刊)より |
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