昔、熊本の医者どん坂(いしゃどんざか)で、キツネとウズラが立ち話をしていました。キツネとウズラは「小豆飯(赤飯)を食べてみたいね」という話になりました。
そこへちょうど、小豆飯の入った重箱を持った子供が通りかかりました。さっそくウズラが、子供の前で怪我をして飛べないふりをすると、子供は重箱を道端において、ウズラを捕まえようと追いかけ始めました。
ウズラが子供をおびき寄せている隙に、ワラ束の中で隠れて見ていたキツネが、重箱の小豆飯を全部一人で食べてしまいました。しばらくして戻ってきたウズラは、小豆飯をキツネが独り占めした事を知って腹を立てました。
ウズラは、悪びれる様子もないキツネを懲らしめてやろうと「ところでキツネどん、娑婆(しゃば、この世)と冥途(めいど、死後の世界)の境って、知っているかい?」と言いました。キツネが「そんなものは知らない」と返事をすると、ウズラは再びワラ束なの中に隠れて待っているように指示しました。
やがて、さっきの子供が再びやってきて、ウズラを見つけると怒って棒を振り回しながら追いかけて来ました。ウズラは、キツネが隠れているワラ束の前まで子供を誘い出し、子供の振り下ろした棒が隠れたキツネに当たるように仕向けました。
キツネは、子供から棒で勢いよく叩かれたために、生死の境をさまよいました。あやうく死にかけたキツネは、腹を立ててウズラに詰め寄りましたが、ウズラは「それが娑婆と冥途の境だよ」と、素知らぬ顔で言いました。
それからのキツネは、食べ物を独り占めすることもなく、ウズラと仲良く過ごしたそうです。
(紅子 2013-9-21 3:42)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 熊本県 |
場所について | 医者どん坂(地図は適当) |
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