昔、佐渡のある村に百姓の若夫婦が住んでいました。子供もまだなく、両親ともすでに他界していたので、さびしい思いをしていました。
ある日、親を売るという商人がやってきました。夫婦はちょうど親孝行がしたかったので、喜んで親を買う事にしました。さっそく200文のお金を払い、きっと貧乏で可哀そうな爺さんと婆さんだろうからと、温かい綿の入った着物を用意する事にしました。貧乏でお金が無いので、自分たちの着物と布団を解体して、着物を作りました。
七日経って、いよいよ親を迎えに行くと、何とそこは立派な屋敷の大金持ちの家でした。屋敷の中では、沢山の息子娘がいて、みな自分が多くの財産を譲り受けようと大げんかしていました。そこへ貧乏夫婦がやってきて粗末な着物を手渡したので、長者の息子たちは大笑いしました。
しかし、大金持ちの老夫婦は「こんな孝行者の子供が出来て良かった」と言い、本当の子供として屋敷に迎え入れました。そして、老夫婦の財産は全てこの百姓夫婦に譲り渡し、やがて夫婦にかわいい子供も生まれ、末永く幸せに一緒に暮らしました。
(紅子 2011-12-27 0:42)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 浜口一夫(未来社刊)より |
出典詳細 | 佐渡の民話 第二集(日本の民話69),浜口一夫,未来社,1978年08月25日,原題「親を買う話」,採録地「羽茂町大崎」,話者「藤井セキ」 |
場所について | 羽茂町大崎(現在の佐渡市羽茂大崎) |
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