放送回 | No.0969(0611-A) |
放送日 | 1987年08月15日(昭和62年08月15日) |
出典 | 真鍋博「愛媛の昔語り」より |
クレジット | 演出:しもゆきこ 文芸:沖島勲 美術:しもゆきこ 作画:堀田篤子 |
ナレーション | 市原悦子 |
むかしむかし、瀬戸内海の小さな島に双子の兄弟が住んでおりました。兄は働くことが嫌いな怠け者、弟は働くことが何より好きな働き者でした。
ある日、弟は畑仕事を終え、いつものように真っ暗になった道を家へと帰っておりました。すると赤い提灯を下げた白いキツネが現れて、弟に提灯を貸してくれたのでした。おかげで弟はやすやすと家に帰ることができました。
次の日、畑仕事を終えた弟の前に、また白狐(しろぎつね)が現れました。弟はお礼を言い、提灯を白狐に返しました。キツネの提灯は不思議なもので、一振りするとぽっちりと赤い光がともります。ひょいひょいと二回振ると、底が開いて小判が零れ出てくるのでした。「おら、小判なんぞより話し相手がほしい。この島の外の話が聞きてえよ。」と、弟は白狐が出してくれた小判を断りました。
次の日、いつものように畑仕事を終えた弟の前に、白狐が若い娘の姿で現れました。白狐は弟を大岩の上へ誘い出し、都や芝居、祭りといった島の外の話を語り始めたのでした。白狐の夜ごとの話は弟にとって夢のようで、何日かが飛ぶように過ぎて行きました。
一方、怠け者の兄は弟から一部始終を聞き出すと、弟になりすまして畑に出かけました。そうして白狐が現れると、兄は「おら、お前の話は聞き飽きた。それよりも金が欲しいんじゃ。」と言いました。
白狐は黙って、提灯を二つ兄に渡しました。兄が提灯を二回振ると、小判がキラキラと零れおちました。兄は大喜びでしたが、白狐が姿を消すと小判は兄の手から舞い上がり、月見草の花に変わってしまいました。月見草は畑から家までの道に何百何千と咲きこぼれました。
それから後、白狐の姿を見ることはありませんでしたが、畑から帰る弟を助けるかのように、月見草は明るい黄色の花をつけるのでした。そうして弟は、月見草の花が咲く頃になると必ず、あの白いキツネの事を思い出したそうです。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-8-4 7:48)