放送回 | No.0094(0057-B) |
放送日 | 1976年11月06日(昭和51年11月06日) |
出典 | (表記なし) |
クレジット | 演出:漉田実 文芸:漉田実 美術:下道一範 作画:上口照人 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔あるところに、滅多に人の訪れることもない貧しい山寺がありました。寺の年老いた和尚さんは、可愛がっているトラ猫と一緒に居眠りばかりして暮らしていました。
そんなある日のこと、年老いたトラ猫が、「和尚さんにお世話になったお礼をしたい」と、言いだしました。人間の言葉を話しだした猫に和尚さんは驚きましたが、猫は気にせず話し続けました。「もうすぐ長者の一人娘が寿命で死ぬから、その葬式で娘の棺桶を空中に釣り上げる。そして、和尚さんがナムトラヤヤ、トラヤヤと声を掛ければ、それを合図に棺桶を下す。それで全てがうまくいく。」
しばらくするとトラ猫の言った通り、長者の一人娘が死んでしまいました。長者は立派な葬式をあげていましたが、式の途中で棺桶が空中に浮き上がりました。偉いお坊さんがお経を読んでもダメで、もうワラにもすがる思いで、山寺の和尚さんが呼ばれることになりました。
何食わぬ顔でやってきた山寺の和尚さんが、トラ猫から教えてもらった掛け声をかけると、棺桶はするすると下りてきました。この一件から、山寺の和尚さんはまるで生き仏のように崇められ、山寺へは多くの参詣の人々が訪れるようになりました。和尚さんは居眠りするヒマもなくなり、忙しい毎日を送ることになったそうです。
(紅子 2011-10-6 22:14)