放送回 | No.0906(0570-B) |
放送日 | 1986年10月18日(昭和61年10月18日) |
出典 | 兵庫県 |
クレジット | 演出:大橋六郎 文芸:沖島勲 美術:渡辺由美 作画:上口照人 |
ナレーション | 常田富士男 |
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昔、ある山あいの村のはずれに、一人の風変りな婆さまが住んでいた。婆さまは、丘の上にある水神塚の横に住んでいて、毎日水神様の祠に手を合わせていた。
そして口癖のように「水が一番ありがたい。水を穢せば(けがせば)罰かぶる。」と言いながら川の掃除をするのだった。ところが他の村人は、この婆さまを“川婆さん”と呼んで馬鹿にして、婆さまの言うことをロクに聞かなかった。そればかりか、川にゴミを捨てて川を汚していたのだ。
そんなある年の夏の事、今まで誰も経験した事のない日照りが村を襲った。日照りは七十日以上も続き、川の水は干上がり、田畑の作物は枯れ始めていた。村の者が雨乞いをする中、婆さまは一人祠の前で祈っていた。村人が川を汚すので、水神様がお怒りなって雨を降らせないのだと思った婆さまは、村人に代わって水神様に詫びていたのだ。
すると七十七日目に、ようやく待望の雨が降り始めた。しかし村人は雨が降り出すと、婆さまが止めるのも聞かず、また川にゴミを捨て始めたのだ。
するとどうだろう、空には雷鳴がとどろき、雨は激しさを増した。川はみるみるうちに水かさを増し、村の田畑や家々を押し流す。村人は必死になって逃げ、村の高台にある寺に逃げ込んだ。しかし、一人婆さまだけは祠の前で祈り、水神様の怒りを鎮めようとしていた。今や、濁流は祠もろとも婆さまを呑み込もうとしている。
その時だった。なんと水神様の祠から、村の高台にかけて大きな虹がかかった。そして不思議なことに、気づくと婆さまはその虹の上を歩いていたのだ。こうして婆さまは、虹の橋を渡り、無事高台に降り立った。
これを見た村人は、今まで川を汚していた自分たちの行いを恥じ、その後は決して川を汚すことはなかったそうな。
(投稿者: やっさん 投稿日時 2012-12-7 17:24)