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たぬきの糸車(たぬきのいとぐるま)

放送回No.0086(0052-B)
放送日1976年10月02日(昭和51年10月02日)
クレジット演出:藤本四郎 文芸:沖島勲 美術:サキスタジオ 作画:高橋信也

あらすじ

ぽんさんの記憶と、伊豆の民話(未来社,1957年11月25日)に、同タイトル名のお話があり「このお話かもしれない」ということであらすじを書いてみます。

むかし、天城の山奥に樵の夫婦が住んでいた。夫婦で木を伐り炭を焼き、夜になると、おかみさんは夜遅くまで糸車を回しては糸をつむいでいた。金が貯まったら里に暮らしたいというのが夫婦の願いだった。

いつからか、夜になると毎晩のように狸がやってきて、水屋のそばの食べ物を漁ったり、いたずらしたりするので、山に行く時には、おひつの蓋の上に石を置くなど、用心をしなければならなかった。しかし、狸は食べ物を取ることができなくなっても、夫婦の小屋にやってきてはうろつき、ポンポコポンと腹鼓を打ったり、ワッショイコラショイと人が荷物を背負って歩く真似をしたりした。
「人を恐れぬ生意気な狸め。今に罠を仕掛けて、とっ捕まえてやる」そう言って、樵夫は腹を立てたが、毎日の山仕事の忙しさに、ついつい見送ってしまっていた。

ある月のきれいな晩のこと、おかみさんはいつものように、キイカラカラ、キイクルクルと糸車を回していたが、しばらくして障子の破れから二つのクリクリとした目玉が覗き込んでいるのに気付いた。
きいからから きいからから
きいくるくる きいくるくる
回る糸車にあわせて、まんまるい目玉もくるくる回る。
おかみさんが気付かないふりをしていると、目玉が引っ込んで、おかみさんの手つきのままに、狸が糸をつむぐ真似をする様子が、月明かりで障子に映し出された。おかみさんは思わず吹き出しそうになったが、だまって糸車を回し続けた。

しばらくすると、障子の破れから目玉が覗いて、熱心に糸を取る手つきを見る。またしばらくすると引っ込んで、障子に糸車を回す真似をする姿が映る。まるで影絵芝居を見ているようで、その愛嬌におかみさんは狸を憎めなくなった。それから毎晩毎晩、狸は飽きもせずやってきて、ワッショイコラショイと荷物を背負う真似をし、それに飽きると、クルクルカラカラとおかみさんが糸車を回す真似をしていた。

そんなある晩のこと、小屋の裏手でキャアと悲鳴が聞こえてきた。おかみさんが裏手に回ると愛嬌者の狸が片足を罠に挟まれ、逆さまに釣り下がっていた。樵夫が昼に仕掛けたものらしく、かわいそうに思ったおかみさんは、音がしないように罠を切ってやり、「遊びに来てもええが、罠なんぞにかかるんじゃないよ。狸汁にされてしまうで」と言って逃がしてやった。狸は何度も何度も振り返りながら、山の奥へと帰っていった。

翌朝、樵夫は罠が切られているのに気が付き、「ゆうべは惜しいことをした。罠にかかっておったようだが、綱を切って逃げてしまってたわい」と言った。それを聞いて、おかみさんは「罠なんて置きなさいますな。生きものには罪なことじゃで」と、さり気もなく返した。

柿の実が色づいて、北伊豆にも冬がやって来ると、天城山の北麓には雪がちらつくようになった。樵夫は木を伐り終え、薪を束ね、炭焼きのかまどを閉ざして、夫婦ともに里へと下りた。谷間の雪が解けて春が来るまでは、里の家に雇われ、冬の手仕事で日を過ごすためである。冬の囲炉裏辺の夜々の語りに、愛嬌者の狸の話がもてはやされた。

椿の花が咲いて春になると、夫婦は米などを背負って天城山へと帰っていった。小屋に付くと、周りの濡れた土には狸の足跡が点々とあり、「狸め、せっせと通うてきたとみえる」そう言って、樵夫は小屋の戸を開け、おかみさんが足を踏みいれると、アッと声を上げた。小屋の座敷の上には白い糸が束ねられ、山のように積まれていた。そして、ほこりだらけになっているはずの糸車には巻きかけの糸が残ったまんまだった。

夫婦で小屋のあちこちを開け広げ、小屋の片付けを済ませ、おかみさんが飯炊きを始めた時、ふいに
きいからから きいくるくる
と、糸車の回る音がし始めた。
みると、板戸の陰から、茶色い狸のしっぽが見える。いつの間にか、狸がやってきて上がり込み、びっくりするほど巧みに糸車を操って、糸を紡ぎ始めていた。それが巻き終わると、糸を外して、いつもおかみさんがしていたように束ね、脇に積み重ねていった。やがて、狸は辺りを見回し、おかみさんが覗いているのを見つけると、ピョンと庭に飛び降りて、さも嬉しそうにワッショイコラショイと荷物を背負う真似をしながら、飛び跳ねて帰っていった。狸はおかみさんのために、一年中の糸をみんな紡いでおいてくれたのだった。

(投稿者: araya 投稿日時 2011-12-18 1:54 )


地図:天城山北麓の山奥(地図は適当)

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