昔、兵庫の丸山川沿いに、見事な柳の木があった。
村人は、畑仕事の行きと帰りにこの木にお参りをして休憩していた。村人は、この柳は村の誇りや自慢に思っていて「柳様」と呼んでいた。
ある年の夏の終わり頃。大きな台風で、丸山川が溢れて柳様や村の田畑が流されてしまった。村人たちは村長と相談し、川の向こう岸の高台に田畑を作る事にした。
村人は、丸山川を歩いて渡る事ができる浅瀬を探した。少し川下の方に、腰ぐらいの浅瀬があったので、村人たちは鎌や鍬を持って無事に向こう岸に渡る事ができた。
向こう岸の高台は、岩や草がかなりあったので、村人たちは暗くなるのも気付かない程に一生懸命開墾した。仕事を終えて家に帰ろうとした頃にはすっかり日も暮れてしまい、渡って来た浅瀬がどこにあるか分からなくなった。
困っていた村人たちが川の前に立ち尽くしていると、川の一部が黄緑に光りはじめた。村人が竹の棒で光っている川底をつついて調べてみると、そこは浅瀬だった。そんな事が、次の日もそれからも続いた。
しばらくすると、また春の嵐で丸山川が氾濫したが、浅瀬は無事だった。村人たちは手をたたき合って喜んでいると、川の浅瀬が黄緑に光り泡が出てきたかと思うと、川の底から白くきれいに磨かれた柳様が浮かんできた。
村人たちは、柳様を掘り起こし、川のそばに丁寧に植えて社を建てて祀った。その年は村も豊作で潤い、村人たちは力を合わせて立派な橋もかけた。今では、この柳様の事を「柳大明神」と呼んで、信仰をあつめているそうな。
(投稿者: KK 投稿日時 2012-10-15 20:43 )
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | クレジット不明 |
場所について | 兵庫県豊岡市小田井町15-6 小田井県神社(柳宮神社) |
このお話の評価 | 8.33 (投票数 3) ⇒投票する |
⇒ 全スレッド一覧