昔ある村の川のほとりに、何代も続くたいそうな長者が住んでいました。この屋敷には、米蔵や味噌蔵や金蔵などのいくつもの蔵が建っていました。
しかし、長者の老夫婦はとてつもないケチで、一日食事は一回きりで、二人で一つの梅干しをおかずにして食べるほどでした。このドケチ長者夫婦の唯一の楽しみといえば、貯めに貯めた小判を投げたり積み上げたりして、お金で遊ぶ事でした。
そんなある晩の事、寝ていた長者夫婦の耳に「助けでけろ~」と悲しげな声が聞こえてきました。この声は毎晩のように続き、あまりの恐ろしさに婆様はとうとう寝込んでしまいました。
そこで爺様が、松の木に登って見張る事にしました。不気味な声が蔵の中から聞こえてきたので、爺様が蔵に飛び込むと、中から一斉に米俵の化け物がゾロゾロと飛び出してきました。これに勢いを得たのか、塩の蔵からは塩の化け物が、味噌の蔵からは味噌の化け物が、金の蔵からは金の化け物が、どんどん蔵を飛び出し屋敷の前の川へ飛び込んでいきました。
川を流れる宝物たちは、ただ見ているだけの村人たちの目の前を通り過ぎ、そのまま流れ去っていきました。この事で自分たちの間違いを悟った長者夫婦は、気前よくお金を使うようになりました。
(紅子 2012-4-13 22:36)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 青森県 |
本の情報 | 二見書房[怪談シリーズ]第1巻_お化けがでたあ~(発刊日:1994年5月25日) |
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