放送回 | No.0822(0517-A) |
放送日 | 1985年10月12日(昭和60年10月12日) |
出典 | 小林祥光「兵庫県の民話」(偕成社刊)より |
クレジット | 演出:小林治 文芸:沖島勲 美術:亀谷三良 作画:片岡千恵 |
ナレーション | 常田富士男 |
むかし、但馬のある村に『おんまさん』という大変力もちの娘さんがおったそうな。
おんまさんの力はもの凄く、大岩を淵に投げ込んで魚を獲ったり、石の地蔵さんを持ち上げて運んだりは朝飯前。おんまさんのおっかあにとってはこれが心配の種じゃった。おっかあはいつも「女の力は隠すものや。人には力もちなことを見せるでないぞ。」とおんまさんに言い聞かせておった。
おんまさんは心優しい娘じゃったから、おっかあの言いつけをよく守って、人前では力を使わないようにしておった。そのためか、おんまさんの力のことは誰にも知られることはなかったそうじゃ。
しばらくして、おんまさんは近くの村から婿さんをもらった。そうして、婿さんもおんまさんの力のことはちぃとも知らずに月日が経っていった。
ある日のこと、婿さんは家の庭で五右衛門風呂に入っておった。ところが突然雨が降り始めたので、婿さんは「おんま、傘を持ってこい!」と、大きな声で怒鳴ったそうな。慌てたおんまさん、力の加減をせずに傘を開いたからたまらない。傘はあっという間に骨までばらばら。
さらに焦ったおんまさんは、夢中で裸の婿さんが入ったままの五右衛門風呂をひょいと持ち上げると、そのまま家の中まで運びこんでしもうた。
おんまさんの力を目の当たりにしたお婿さんは、「お前の馬鹿力をもし人に見られてみろ、もの笑いの種じゃ!お前ばかりかワシまで笑い物じゃ!」と、怒った。おんまさんは悲しくなってしまい、涙をぽたぽた流しながら、囲炉裏の火箸をぐにゃぐにゃに曲げてしもうた。それを見た婿さんは青くなって「お前は亭主を脅す気か!」と言ってさらに怒り散らしたそうな。
その後、おんまさんは女じゃからといって力を隠す必要はないということに気付いて、この婿さんを追い出し、力もちでも構わんと言ってくれる新しい婿さんをもらって、のんびりと幸せに暮らしたそうじゃよ。
(投稿者:ニャコディ 投稿日時 2014/4/12 22:26)