昔、出雲の美保関(みほのせき)の村は漁業で活気づいていました。それも「えびす様」のおかげだといって毎日漁師たちはお参りを欠かしませんでした。
ところが、ある日を境に魚が全く捕れなくなってしまい村は寂れていきました。村に住む儀助(ぎすけ)じいさんは魚を捕ろうと夜明け前に揖屋(いや)の海に船を出しました。そこには揖屋の浜辺で美しい姫神とえびすさんがいて、2人で遊んでいたのです。
えびすさんは一番鶏が鳴くと「夜になったらまた来る。」といって慌てて船を漕いで村に戻り、いびきを掻いて眠ってしまいました。魚が捕れなくなったのは昼寝しているために漁師たちの願いが耳に入っていないためだったのです。村人たちは困りましたが相手は神様なので諫めることが出来ません。
儀助じいさんは「夜起きて昼に寝てしまう」年寄り鶏を連れて、真夜中に揖屋の浜に向かいました。鶏が鳴くとえびす様は驚いて村に向かいました。途中、「フカ」がえびすさんに襲いかかり着物を引きちぎってしまいました。村に戻ったえびすさんは真夜中ということに気づき鶏に騙されたと怒りました。
翌朝、漁師一同がお参りしましたが「鶏を何とかしないと願いは聞き入れない」と怒り心頭で願いを聞いてくれません。儀助じいさんは立ち上がって「これから鶏も飼わないし卵も食わん。だから姫神様の所に行かないで海に魚を戻して欲しい」と訴えました。
それからえびすさんは出かけなくなり、海に魚が戻りました。美保関の村はそれ以来、鶏も飼わず、卵も食べなくなり、自由になった鶏たちはのびのびと暮らしたそうです。
(投稿者: のんの 投稿日時 2012-2-2 12:57 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 岡義重 |
場所について | 出雲 |
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