放送回 | No.0805(0506-A) |
放送日 | 1985年07月27日(昭和60年07月27日) |
出典 | 中村博「愛媛県の民話」(偕成社刊)より |
クレジット | 演出:前田康成 文芸:沖島勲 美術:西村邦子 作画:前田康成 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔瀬戸内の海に由利島という小さな島があった。由利島には不思議な言い伝えがあった。
それは真夜中ともなると、潮待ちで止まっている舟に「お船にもうし…お船にもうし…」という声が聴こえて来て美しい女の幽霊が現れるという。こんな噂が立ってから由利島に止まる舟はなくなった。
そんなある夜、どこかの舟が潮に流されて由利島に錨(いかり)を下ろさねばならなくなった。船員が由利島の化け物について話していた所、船長が来て、その化け物に返事をした者はいないのかと問うと、船員が誰もいないらしいと答えた。
しばらくすると「お船にもうし…」という声が聴こえてきた。すると船長は「何の用じゃ、申してみい」と答えた。すると海の底から女が現れ、じっと黙って船長を見つめている。女が何も言わないので船長は船員に錨を上げろと言ったが、その時船員は皆人魂に取り憑かれ、正気を失っていた。
船長が急いで錨を上げていると、何かに肩を掴まれた。振り返るとそこにはさっきまで女の姿だった幽霊がガイコツとなって立っていた。そしてガイコツが船長にのしかかって来た瞬間、まばゆい光につつまれた。その瞬間船員達は正気に戻り、光の方へ近寄っていった。
するとそこには金、銀に埋もれた船長が倒れていた。気がついた船長は「あの女の霊が大阪へ連れ帰ってほしくて、ここで潮待ちする舟に頼んでいたのだという。そしてこの金、銀は大坂までの舟賃らしい」 と語った。
船長と船員は女の霊に手を合わせ、そして約束通り大坂まで辿り着いた。そしてこのたくさんの銭で「由利屋」という船具屋を始めた。店は結構繁盛したそうだ。そして今でも瀬戸内の一角に「おふねにもうし」という地名が残ってるらしい。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
地図:由利島 |