昔あるところに荷車がようけ通る道があった。
その道のそばには小川が流れており、小川の土手には桶屋のカニの一家、下駄屋のタニシの若夫婦、提灯屋のどじょうの老夫婦、そして毎日寝ているだけの大いばりで怠け者の独り者のビキドン(カエル)が住んでおった。荷車が道を通るとみんなこわがったが、ビキドンだけは平気であった。
ある日のこと、前日夜遅くまで酒を飲み、昼近くまでビキドンが寝ていた。周りの家からは仕事をする音が聞こえてくる。ビキドンはその音に腹を立てて、それぞれの家に文句を言いに行った。その時にまた荷車が通った。みんなはいつもの通りにこわがったが、ビキドンだけは「荷車なんて怖くない、牛の足の間を潜り抜けて、荷車の上で逆立ちしてみせる」と言い出した。
みんなが止めるのも聞かずに、ビキドンは荷車のところへ行った。驚いたことにビキドンは本当に牛の足の間を見事にり抜けた。そして荷車の車輪の間もぴょんぴょんと飛びぬけた。そして本当に荷車の上で逆立ちをした。しかしその時に手を滑らせて荷車から落ちてしまい、そのまま荷車にひかれてしまい、ぺちゃんこになってしまった。みんなはあわててぺちゃんこになり、目を回しているビキドンの周りに集まった。
その後、ビキドンは心を入れ替えて鍛冶屋になり、他の一家と同様に一生懸命に働くようになったということである。
(投稿者:カケス 投稿日時 2014/2/13 22:11)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 宮崎県の民話(偕成社刊)より |
出典詳細 | 宮崎県の民話(ふるさとの民話23),日本児童文学者協会,偕成社,1981年3月,原題「ビキと荷車」,再話「比江島重孝」 |
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