放送回 | No.0075(0045-A) |
放送日 | 1976年08月14日(昭和51年08月14日) |
出典 | (表記なし) |
クレジット | 演出:児玉喬夫 文芸:沖島勲 美術:青木稔 作画:スタジオアロー |
ナレーション | 常田富士男 |
昔、ある漁師町では、お盆の日に「迎え火」を焚いて死んだ人の霊をお迎えするならわしがありました。またこの日は、海で死んだ人の霊が船幽霊になって船を沈めるので、決して漁に出てはいけないと言われていました。
ところがある時、たいへん威勢のいい漁師の親方が、村の老人たちが止めるのも聞かず、漁師たちと船をこぎ出しました。沖に出ると面白いように魚が取れ、親方はご機嫌で船の漁師たちにどんどん魚を捕らせました。
そのうち、雲行きがあやしくなり水平線の向こうから不気味な船が近づいてきました。不気味な船からは青白い火の玉がふわふわと舞い飛び、やがて「柄杓をくれえ~、柄杓をくれぇ~」と、いっせいに漁師の船に押し寄せてきました。
その時、浜では不思議な事がおこっていました。浜で焚いていた迎え火が次々に消え、夜空で赤い炎となって沖へ飛んでいきました。炎の群れは、漁師たちの船のそばまでやってきて「海で死んでいった仲間じゃないか、悪さをせずに消えてくれ」と、船幽霊たちに話しかけました。
すると、船幽霊たちは赤い炎の言葉を聞き入れたのか、一つ一つ消えていきました。不気味な船が立ち去ったのを見届けた赤い炎の群れも、浜へ引き返していきました。静かになった沖に残された漁師の船では、親方の気でも狂ったのか「柄杓が欲しい…、柄杓が欲しい…」と口走っていました。
(紅子 2012-2-12 19:36)