No.0740
さんにんきょうだい
三人兄妹
高ヒット
放送回:0465-A  放送日:1984年10月13日(昭和59年10月13日)
演出:フクハラ・ヒロカズ  文芸:沖島勲  美術:渡辺由美  作画:フクハラ・ヒロカズ
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あらすじ

むかしある所に、筏師の夫婦と三人の子供がおった。ある雨続きの年、夫婦は禿山の崖から崩れ落ちた岩に潰されて死んでしもうた。遺された子供達はそれぞれ、姉は嫁に行き、兄の松吉は炭の卸の仕事を始め、末娘の「かめ」は猫と一緒に家に残って暮らしていくことにした。

松吉は、普通は秋から冬まで焼く炭を、夏まで焼かせて安く買占め、冬に高く売るというやり方で大儲けし、数年後には街道沿いに小奇麗な店を出すほどになっておった。そうして店の裏山を買占め、どんどん木を切って炭を焼かせた。

一方、「かめ」は親の遺した畑で杉の苗を育て、その苗を親が死んだ崖やあちこちの山の岩の隙間に植えていった。じゃが、大雨が降れば苗は土と一緒に流されてしまう。それでも「かめ」は、苗を植えるのをやめなんだそうな。村人達は、他人の山に杉を植え続ける「かめ」の陰口を叩いておったし、兄の松吉も店の裏山には絶対杉を植えるなと言って「かめ」と絶縁してしもうた。

そうして二十年が経つ頃には、松吉は炭焼き長者と呼ばれる大商人になっておった。一方、「かめ」は相変わらず山に這いつくばって、苗を植え草を刈り蔓を切って、黙々と杉を育てておった。初めに植えた苗はもう、身の丈の何倍にも育っておった。山の持ち主が杉を切ろうとしても、「かめ」の杉は崖の途中や岩の上に植えてあるので危なくて近寄ることもできんかった。

それからまた三十年が経ったある年、例年になく大雨が続いた。そうしてとうとうある日、炭焼き長者の店の裏山で山崩れがおこり、松吉も店も蔵も、何もかもを飲みこんでしもうた。一方、「かめ」が杉を植えた山は、杉の根が岩や土を抱え込み小石一つ崩れなんだ。村人達は「かめ」に感謝し、皆で崩れた山に杉の苗を植えた。

「かめ」は七十歳を越えても相変わらず一人で山に入り、ある日、大きく育った杉の中で人知れず死んでおったそうな。村人達はそこに「美杉観音」という小さな観音堂を建てた。炭焼き長者のことはたちまち忘れ去られたが、山に杉を植え続けたかめ婆さんのことは、誰も忘れなかったということじゃ。

(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2013-7-28 14:31 )


ナレーション常田富士男
出典島根県
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このお話の評価9.3333 9.33 (投票数 18) ⇒投票する
※掲載情報は 2013/7/28 14:38 時点のものです。内容(あらすじ・地図情報・その他)が変更になる場合もありますので、あらかじめご了承ください。
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コメント一覧
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taneugene934  投稿日時 2021/11/4 7:50
私が松吉だったら、妹を山の後ろに植えさせておいて、ひどい罰として土砂降りにならないようにと願っていた。
もんた  投稿日時 2020/1/26 18:09
カメさんはえらいと思います。
華煌  投稿日時 2019/12/24 14:50
カメさんのひたむきな姿が、アフガンで亡くなった中村哲医師と重なりました。
どちらも自身への見返りを考えず、ただ人々の幸せのため、地道に勤められたのですね。
すばらしい生き方に感動しました。
この世だけでなく、あの世でも人生があるなら、間違いなくお二人は最高の世界に生きておられるでしょう。
通りすがりの老人  投稿日時 2019/3/17 16:52
それから10年が経った…そして更に30年の年月が経った…しかし、お婆さんになった〝かめ〟の傍らにはまだあの猫がいるとは…、猫の寿命が長すぎると思とった。
ゲスト  投稿日時 2017/2/22 13:42
長女の影薄すぎ
ゲスト  投稿日時 2016/11/12 4:16
ここのイメージ画像3枚目の泣いているシーンが、市原さんの演技もあって凄くしんみり来ます。この絵柄だからこそ余計に…
ひっそりした最期も印象的でした
匿名希望  投稿日時 2014/12/1 14:17
フクハラさんの作品には決まって、白い猫が登場するけど。
もしかして、フクハラさん自身が飼ってる猫がモデルになってるのかな?
トモメル  投稿日時 2014/9/11 12:29
追伸

三人兄弟 とあるのは、日本神話のスサノオ様の三人兄弟を表しているのかもしれませんね
杉を植えるのは、スサノオ様の御働きを表しているみたいですね
性別は逆ですが。。。

出典場所が不明なのが、かなり古いお話のような気がします
トモメル  投稿日時 2014/9/11 12:09
うるうるきました
いい話ですね
題名は違うほうがいいかもです

フクハラさんの猫好きもです
渋川ナツキ  投稿日時 2012/9/5 13:04
タイトルと違って長兄と末妹の話でしたね。
(「むすめ杉」「おみよし松」みたいにフクハラばあさんの名前から引用して「おかね杉」とした方がすっきりしたのでは?)

おなじみフクハラばあさんの一代記として視聴。
(ラストで杉の木陰で眠る様に息を引き取っていた姿に涙)

一家が解散した後でもおかねを慕って戻って来るのは
さすが主人想いのフクハラぬこの面目躍如。
(しかし「姥皮」や「嫁さんのみやげ」ほどのサポートキャラでなくその後ほとんど登場しなかったのが残念)
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