放送回 | No.0738(0464-A) |
放送日 | 1984年10月06日(昭和59年10月06日) |
出典 | 熊本の伝説(角川書店刊)より |
クレジット | 演出:白梅進 文芸:沖島勲 美術:阿部幸次 作画:白梅進 |
ナレーション | 常田富士男 |
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昔、熊本は天草の白瀬(しろせ)に、おくん婆さんというケチな婆さんがいた。
嵐の去ったある朝、婆さんが磯で貝や小魚を拾っていると、海辺の岩場に何か大きなものが見えた。よく見てみると、それは今まで見た事もない大きなタコの足だった。婆さんは、この足を街まで持っていけばしこたま儲かると思い、足を引っ張り始めた。だが足は途中で小さく切れてしまった。その夜ばあさんは、明日岩場にあのタコの足がまたあったら、もっと長く取ってやろうと鎌を研いだ。
そして翌朝岩場へ行ってみると、またあの大きなタコの足があった。婆さんはタコの足を引っ張り足の付け根が見えると、それを鎌で切って運んだ。婆さんがこの大ダコの足を牛深(うしぶか)の街に行って売ると、たいそうな儲けになった。それから毎日婆さんは岩場へ出てはタコの足を切り、街まで運んで大儲けをした。
それから7日経った夜、となりの爺さんが婆さんを尋ね、「あのタコの足はもう何本切った?」と聞いた。婆さんが7本切ったと言うと、爺さんは「明日最後の足を切られたらあのタコはもう生きていけん。それにあまりむごいことをすると、どんな祟りがあるかわからんぞ。明日タコの足を切るのはやめた方がいい」と忠告した。だが婆さんはそんなことに耳を貸そうとしなかった。
そしてその夜、婆さんは夢をみてうなされた。婆さんがいつもの岩場でタコの足を引いていると、あの大ダコが海から現れ、最後の足だけは切らないでと泣きながら頼むのだった。婆さんは夜明け頃に目を覚まし、岩場へ来てみると、またあの大ダコの足が出ていた。
それを見た婆さんは途端に夢のことなど忘れてしまい、タコの足を引っ張り始めた。だがその時、突然婆さんはめまいを起こし、足をすべらせ海に落っこちてしまった。海に落ちた婆さんは急に海に引き込まれてしまった。それから空がにわかにかき曇り、やがて大嵐になった。
一晩中荒らしは吹き荒れてようやく晴れたが、その後婆さんの姿をみた者はないそうだ。 その後、婆さんが大ダコの足を取ったこの瀬は、「おくん瀬」と呼ばれるようになった。
(引用/まんが日本昔ばなし大辞典)
地図:おくん瀬 |