放送回 | No.0722(0453-B) |
放送日 | 1984年07月21日(昭和59年07月21日) |
出典 | 川崎大治(童心社刊)より |
クレジット | 演出:馬郡美保子 文芸:杉井ギサブロー 美術:馬郡美保子 作画:平尾光子 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、能登に、木や花が大好きな五作という若者がいました。五作は程良い年頃でしたが、結婚もせず、いつも野山に行っては珍しい草や花を採っていました。
ある日、五作はいつものように深見山へ入って散策していると、不思議な光る玉が現れました。やがて光る玉は、美しい薄紅色の花にかわり、林の奥へ奥へと進んでいきました。
五作が、美しい花を追いかけて林の奥へ進んでいくと、いつしか険しい崖の上へ出てきました。崖の上は、沢山の美しい花が咲き乱れる広々とした原っぱでした。
原っぱでは、美しい乙女たちが待っていて、五作においしいお酒を振舞ってくれました。五作は、花の御殿で美しい花と乙女たちに囲まれて、夢のような時を過ごしました。
やがて乙女たちは、一輪の美しい花を指さして「どうぞこの花を折ってください。私だと思って折ってください、お願いします」と、真剣な面持ちで五作に頼みました。
五作は、美しい花を折ってしまう事に躊躇しましたが、乙女たちの熱心な頼みを断り切れず、言われるがまま花を折りました。すると、五作はそのまま気を失ってしまいました。
ふと目が覚めると、そこは林の中でした。五作は「夢でも見ていたのか」と思いながら、自宅へ戻ると、庭にはあの時の大輪の花が咲いていました。
この花は、折って接ぎ木(つぎき、茎を折って他の植物の茎に接ぐ)にすると、より美しく咲きました。いつからか、この花を牡丹(ぼたん)と呼ぶようになりました。
(紅子 2013-9-27 19:32)