放送回 | No.0662(0416-A) |
放送日 | 1983年10月29日(昭和58年10月29日) |
出典 | 川村たかし(偕成社刊)より |
クレジット | 演出:大竹伸一 文芸:沖島勲 美術:西村邦子 作画:大竹伸一 |
ナレーション | 市原悦子 |
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昔ある所に貧乏な寺があったそうな。この寺には風呂がなくてな、坊様は仲良しの作兵衛どんの家まで貰い風呂に行っておったそうな。
作兵衛どんは《こんにゃく玉(芋)》を育てるのを生業にしておった。こんにゃくの原料になるこんにゃく玉は、春に畑に植えて育て、秋に掘り出し、家の中で越冬させて、翌年の春にまた畑に戻す、これを三、四年繰り返さんと一人前にはならんのじゃよ。
ある春の夜のこと。いつもより少し遅い時間に、坊様は貰い風呂にやってきた。作兵衛どんの家の風呂は、家から離れた風呂小屋の中にあるんじゃが、坊様が近づくと、誰もおらんはずの風呂小屋の中から人の声がする。不思議に思うた坊様が中をのぞいてみると、ツルツル頭の人が一人、湯につかっておった。「わ、わしが風呂に入っとるぅ~!」なんと、その人の顔や声は坊様に瓜二つじゃった。
これはキツネかタヌキの仕業に違いないと思うた坊様と作兵衛どんは、釜茹でにして懲らしめてやることにしたんじゃ。二人は足音を忍ばせて風呂小屋に近付くと、一気に風呂に蓋をして、その上から漬物石で重しをし、火をどんどん焚いた。いきなり茹でられて、風呂の中の者は大騒ぎしておったが、そのうち静かになった。二人が蓋を開けてみると、湯の中にはこんにゃく玉が一つ、ポカァッと浮いておるだけじゃった。
次の日、作兵衛どんの畑のこんにゃく玉が一つ、なくなっておった。「こんにゃく玉も一度風呂に入ってみたかったんじゃろう。あんなに懲らしめてすまん。」と、坊様と作兵衛どんは、茹でてしもうたこんにゃく玉を畑に戻してやった。その後、このこんにゃく玉はちゃんと芽を出し、その年は大豊作じゃったそうな。
それから作兵衛どんの家では、こんにゃく玉を時々風呂に入れてやると、豊作が続くようになったということじゃ。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-4-30 18:18 )