八丈島のある村に、おじいさんとおばあさんの夫婦が住んでいました。
ある日、家の戸をとんとんと叩く者がありました。応対してみるとこれが見かけた事の無い若い男で、「山中で道具を無くし、探している内に道に迷ったのでひと晩泊めて下さい」との事。老夫婦は早速イモがゆを炊いて御馳走してやり、若者を泊めてやりました。
翌日、若者は泊めてくれた礼を言い、「身寄りの無い独り者なので、此処で雇って下さらんか」と老夫婦に頼みました。老夫婦も若者の申し出を喜び、「良かったらわしらの息子になってずっと此処に住んで下され」と言いました。
若者は本当に働き者で、毎日山に登って大きな木を沢山切り、町へ行って売って大儲けをしました。老夫婦の暮らしは少しずつ豊かになりました。
ある時、若者が山へ行った後におじいさんがふと家の中を見ると、木を切る為のノコギリを忘れているのに気がつきました。その内に雨が降りそうになったので、おばあさんは若者に着せる為の蓑笠を携え、おじいさんはノコギリを持って山へ登りました。
すると、若者が仕事場にしている森の一角で、人の背丈ほどもある大きなカマキリが、自分の鎌で杉の木をなぎ倒しているのに出くわしました。若者の正体は大カマキリだったのです。自分の正体を知って驚いている老夫婦に気がついたカマキリは、羽音も凄まじく空へ舞い上がると、そのまま山の向こうへ飛び去ってしまいました。
その後、老夫婦はカマキリの若者がこしらえた蓄えのお陰で安泰な暮らしを送る事が出来ましたが、大カマキリの若者は二度と老夫婦の元へは帰りませんでした。老夫婦はキダマ様にカマキリの若者の後生を祈りながらひっそりと暮らしたと言う事です。
以来、八丈島ではカマキリの事を「かせぎめ」と呼ぶのだそうです。これは「よく稼ぐ奴」と言う意味なのです。
(投稿者: 熊猫堂 投稿日時 2013-9-22 15:05 )
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 浅沼良次(未来社刊)より |
出典詳細 | 八丈島の民話(日本の民話40),浅沼良次,未来社,1965年08月15日,原題「かせぎめ」,採録地「大賀郷」,原話「菊池のぶか」 |
場所について | 八丈島の大賀郷(地図は適当) |
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