長崎の大村の浜の沖、久原(くばら)の大流れは、急で危険な海域として漁師たちから恐れられていました。
ある夏の夜、災いを呼ぶといわれる「真珠の夜光」という不思議な光が海底から現れました。十年前にこの光が現れた時、漁村は大津波に飲み込まれたので、人々たちは大津波が再びやってくるのかと驚き慌てました。
漁師の親方は、海底の真珠をえぐり取ろうと考えましたが、誰も危険な大流れに潜ろうとはしませんでした。そこへ、親方の娘トセと密かに恋仲だった里に住む若者のヒコが、名乗りをあげました。里人との付き合いを禁じていた親方は、若者と娘の結婚を許せませんでしたが、ヒコとトセは沖へ向かって漕ぎ出しました。
大流れの近くまでくると、ヒコは躊躇せず海の中へ飛び込みました。が、華奢な体のヒコはなかなか潜る事ができず、それどころか波にさらわれてしまいました。この様子を見ていた親方は、すばやく腰の刀をヒコに向かって投げました。以前に殿様からもらったという大切な刀はずっしりと重く、ヒコは刀の重みでぐいぐい海中へ潜っていきました。
海底の大きなあこや貝を刀でこじ開けたヒコは、まばゆい光を放つ大真珠を抱えて海面に顔を出しました。こうして、ヒコは大きな真珠とトセを同時に手に入れることができました。その後、この大真珠は、久原を照らす灯台として長く人々の役に立ったということです。
(紅子 2012-1-11 2:41)
ナレーション | 市原悦子 |
出典 | 長崎県 |
場所について | 久原(地図は適当) |
講談社の300より | 書籍によると「長崎県のお話」 |
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