放送回 | No.0628(0394-A) |
放送日 | 1983年05月28日(昭和58年05月28日) |
出典 | 千葉のむかし話(日本標準刊)より |
クレジット | 演出:やすみ哲夫 文芸:平見修二 美術:あかばんてん 作画:岩崎治彦 |
ナレーション | 市原悦子 |
備考 | キツネは?坂戸の尾牛台(佐倉市)にあるヒサゴ塚に住んでいた。 |
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むかし、千葉の坂戸に「おめでたのはっちむどん」と呼ばれる庄屋がおった。はっちむどんの屋敷はそりゃあ大きくてな、奉公人も山ほどおったそうな。じゃが奉公人達は皆、はっちむどんのことを、「はっちむどん!はっちむどん!」と気安く呼んでおったんじゃと。
はっちむどんは「おめでた」が大好きで、子供が生まれたと聞くたびに大喜びで踊りだし、乳の出が良くなるというおこわを炊かせてお祝いするのじゃった。「人でも動物でも子供が生まれることはめでたい!」と、裏山に住む狐が子を産んだ時にも、自分で狐の巣穴におこわを届けるほどじゃった。ほんに「おめでたのはっちむどん」とは、よう言うたもんじゃ。
ある日、はっちむどんは隣村の長者の家で子供が生まれたと聞き、早速おこわを炊かせ、自分で届けに行ったんじゃと。じゃが、はっちむどんが隣村から帰る頃には、日もとっぷり暮れておった。やがて道は真っ暗な峠にさしかかり、はっちむどんは困ってしもうた。
すると、奉公人のおなごが提灯を下げて現れた。はっちむどんは喜んだが、心配して迎えに来たと言うそのおなごの顔には、とんと見覚えがなかった。ふと見ると、おなごの着物からは黄色いふさふさした尻尾がたれておった。「さては裏山の狐が……」はっちむどんは狐の提灯に導かれ、今夜ほど明るい夜はなかったと、しみじみ嬉しく思ったのじゃった。
そうして狐は、はっちむどんを屋敷の前の橋のたもとまで送ってくれたんじゃと。別れ際、はっちむどんが「子供達によろしゅうなぁ~」と声をかけると、狐はハッと元の姿に戻り、走り去って行ったそうな。
それからというもの、はっちむどんの帰りが遅いと、提灯を下げた母狐が現れて橋のたもとまで送ってくれたそうな。はっちむどんの方も「いつもご苦労さんよ~」と、狐へのねぎらいの言葉を忘れんかったそうな。
(投稿者: ニャコディ 投稿日時 2012-8-11 8:40 )
地図:坂戸(地図は適当) |