放送回 | No.0596(正月特番) |
放送日 | 1983年01月02日(昭和58年01月02日) |
クレジット | 演出:やすみ哲夫 文芸:平見修二 美術:あかばんてん 作画:岩崎治彦 |
ナレーション | 市原悦子 |
昔、山形の高松のある村に、源兵衛(げんべえ)という爺さまが婆さまと住んでいた。二人は大の酒好きだったが、この辺りの村では、お酒を作るとたっぷりと税金を取られるのだった。源兵衛の貧しい村では税金は払えないので、皆、こっそりとどぶろく(酒)を作っていた。
ある年の暮の事、源兵衛が山にでかけている間に、ひょっこりと酒横目(さけよこめ※酒を取り締まる役人)が見回りにやって来た。酒横目が、源兵衛はどこか?と尋ねると、婆さまは村中に聞こえるように大声で叫んだ。「爺さまー、酒横目さまがござったよー」それを聞いた村人たちは、大急ぎで自分たちのどぶろくを隠し、おかげでどの家の酒もバレずにすんだ。
その夜、囲炉裏(いろり)の上に隠していたどぶろくのカメ(壺)を降ろそうと、源兵衛はハシゴに登った。そのカメはとても重く、婆さまに手伝ってもらおうと「けっつ(尻)をおさえてくんろ」と頼んだ。
はしごの下にいた婆さまが、「ほい、おさえたよ」と答えたため、源兵衛が手を放すと、カメは床に落ちガシャンと割れてしまった。婆さまは、カメの尻をおさえたのではなく、自分の尻をおさえていた。
源兵衛はがっかりしたが、村人たちが少しずつどぶろくを持ち寄ってくれたので、カメ2杯分も集まった。おかげで、源兵衛の家でも良い正月を祝う事ができた。
(紅子※講談社の決定版100より 2011-9-18 23:01)
地図:山形の高松(地図は適当) |