昔、下関に菊屋という海産物問屋がありました。この海産物問屋の夫婦はたいへん仲が悪かったので、心優しい一人娘のお菊は心を痛めていました。
そこでお菊は、夫婦仲が良くなるようにと毎日お寺に願掛けに通いましたが、その思いをよそに夫婦仲は一向に良くなりませんでした。いつしか菊の気苦労は体にまで及び、ある梅雨の日ついに倒れたお菊は、しばらくすると息を引き取りました。
その夜、お寺にお菊の幽霊が現れ、和尚さんに「両親の事を頼む」と告げました。和尚さんは、お菊の話を聞きながらその姿を紙に書き写すと、丁度そこへお菊の両親がやってきました。和尚さんは今しがた現れていたお菊の幽霊の事を話し、不仲の両親を戒めました。
この事があってから、お菊の両親は生まれ変わったように仲が良くなり、父も商売に精を出すようになりました。そして毎年、お寺ではご本尊様の御開帳の時、お菊の幽霊の絵を出して夫婦仲の大切さを説きました。この御開帳の事を「幽霊祭」と言い、後々まで伝わっています。
(紅子 2011-10-30 21:39)
ナレーション | 常田富士男 |
出典 | 山口県 |
備考 | 毎年7月17日に幽霊の掛け軸が御開帳される。 |
DVD情報 | DVD-BOX第11集(DVD第52巻) |
現地・関連 | お話に関する現地関連情報はこちら |
場所について | 永福寺 |
本の情報 | 二見書房[怪談シリーズ]第4巻_ひゃ~、化け物だ(発刊日:1995年7月25日) |
講談社の300より | 書籍によると「山口県のお話」 |
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